2025年。
昭和東南海地震(1944年)から、81年が経過しました。
かつて10万人以上の被災者を出したこの地震は、もはや記憶の中から薄れつつあるかもしれません。
しかし、南海トラフ地震は今も確実に「次の発生」を待っています。
私たちの国民性が、災害を“忘れさせる”
日本人は、どんなに大きな災害があっても、日常の暮らしに戻る力があります。
それは強さでもありますが、一方で――
「時間が経てば忘れてしまう」
という**集団的な“慣れ”**が、防災意識を鈍らせてしまうこともあります。
阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震――。
そして昭和東南海地震。
多くの命が奪われた過去があるにもかかわらず、「今が平和だから」と危機感を失ってしまうのは、私たち自身の油断かもしれません。
南海トラフ地震とは?
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界で、おおむね100~150年おきに繰り返されてきた超巨大地震です。
次に起きるとされる「南海トラフ巨大地震」では、国の想定で:
- 震度7:静岡~宮崎の一部地域
- 10m超の津波:太平洋沿岸の広域に
という壊滅的な被害が予測されています。
これは、「日本列島の半分が機能停止する」可能性をはらんだ災害です。
発生から81年。いまが“臨界点”
前回の南海トラフ地震は、以下の2つの地震に分かれて発生しました。
- 1944年:昭和東南海地震(東側)
- 1946年:昭和南海地震(西側)
この2年の時間差は、私たちに重要な教訓を与えています。
「一度揺れたら終わり」ではなく
「地震は連鎖する」ものだということ。
2025年現在、最後の地震からすでに約80年。
これは、次の地震が「いつ起きてもおかしくない」とされる時期に差し掛かっているということです。
異常なしでも突然来る
南海トラフ地震には「南海トラフ地震臨時情報」という仕組みがあります。
異常な地殻変動などが観測された場合、事前に注意喚起されるのです。
しかし政府は次のようにも警告しています:
「異常が何もないまま、突発的に発生することもある」
つまり、何の前触れもなく、明日突然起きてもおかしくないということです。
日常に“備え”を組み込む
私たちにできることは、日頃からの地震対策を「習慣」として持つこと。
物の備え
- 水・食料(3日〜7日分)
- 懐中電灯・モバイルバッテリー
- 簡易トイレ・衛生用品
- 常備薬・救急セット
- 乳幼児や高齢者向けの物資
心と行動の備え
- 家族で「避難ルート・連絡方法」の確認
- 自宅周辺のハザードマップの再確認
- 防災アプリの導入
- 地震発生時の動きを「脳内シミュレーション」
医療現場からの実感として
私は医療従事者として、災害時に医療体制がいかに脆くなるかを身をもって感じています。
病院は被災すれば「患者を救う場所」ではなく「支援を待つ場所」になってしまうこともあります。
だからこそ私は、「自分や家族の命は自分で守る」という視点を、どうか一人でも多くの人に持ってほしいと願っています。
一部の“噂”についても
SNSでは、「政治的背景と地震を結びつけた話題」も散見されます。
たとえば「自民党が敗退した地域に地震が起きる」といったものです。
もちろん、これには一切の科学的根拠はありません。
不安や不信が、そうした噂を生むこともありますが、事実として災害は誰にでも、どこにでも等しく起こり得るのです。
だからこそ私たちは、冷静に備え、行動することを第一に考えるべきだと思います。
忘れない、慣れない、だから備える
災害は「確率」ではなく「いつか必ず起きるもの」と考えるべき時期にきています。
- 今、防災バッグの中身を1つでも点検する
- 今、家族に「地震が起きたらどこで会うか」を話す
- 今、1分でも防災アプリを開いてみる
その1分が、未来の命を守るかもしれません。
「過去を忘れてしまう国民性」だからこそ、忘れずに行動できる人から、次の安全をつくっていきましょう。
(編集後記)
このブログは、医療現場に身を置く一人として、「今の平和が“当たり前”ではないことを伝えたい」という思いで書いています。
静かな生活の中にも、防災の“視点”を持っていただけたら幸いです。
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