最近Audibleで聴いてよかった小説『炎熱商人』(深田祐介)を紹介します

レビュー

最近、Audibleで深田祐介の小説『炎熱商人』を聴きました。フィリピン・マニラで木材取引に関わる日本の商社マンたちの活躍を描いた、リアルで重厚な企業小説です。

炎熱商人(上) (文春文庫 ふ 2-5)
太平洋戦争の傷跡を色濃く残す炎熱地マニラを舞台に、国際ビジネス最前線で働く商社マンたちの誇りと情熱、愛と死、そして直面する現実を、壮大なスケールで描いた直木賞受賞作。
炎熱商人(下) (文春文庫 ふ 2-6)
炎熱商人(下) (文春文庫 ふ 2-6)

あらすじ・登場人物

物語の中心は、中堅商社・鴻田貿易のマニラ事務所長で後に支店長となる小寺和男。
彼のほかに、合板メーカー・荒川ベニヤから鴻田貿易に出向し木材の現地検品を担当する石山高広、そして日比混血の現地雇用社員であるフランク・佐藤・ベンジャミン(佐藤浩)が軸となります。

彼らは建築業者や現地の材輸出業者と複雑に絡み合いながら、激しい商戦を繰り広げていきます。物語は、佐藤の幼少期の戦時中のマニラの軍事的事情も織り交ぜつつ進行します。


作品の特徴と背景

本作は実際に1971年11月21日に起きた、フィリピン・マカティ市での住友商事マニラ支店長射殺事件に着想を得ています。結末はまさに非業の死と言うべき悲劇ですが、作品全体には軽妙な描写も随所にあり、硬派な企業小説でありながら読みやすいエンタテインメントにもなっています。

荒川ベニヤの本拠地である東京・荒川区の町屋という身近な場所の描写や、石山の母・咲子との漫才のような会話など、サービス精神旺盛なユーモアも散りばめられています。


受賞歴・評価

深田祐介はこの作品で6度目の直木賞ノミネートにして受賞を果たしました。選考委員の池波正太郎は「東京の下町と江戸っ子を売り物にする、歯が浮くような老女があらわれ、事々にブチこわしてしまうのは残念だった」と評しています。

登場人物が多く、序盤はやや読みにくいところもありますが、後半の盛り上がりはしっかりしたエンタメ性を持ち、企業小説として非常に見応えのある作品です。


テレビドラマ化も

1984年にはNHKで2回シリーズのテレビドラマ化もされました。脚本は大野靖子、主演は緒形拳(小寺役)、松平健(石山役)、中条きよし(佐藤役)と豪華キャストが顔を揃えています。

松平健の熱血商社マンぶりは意外なほど似合っていて、当時のスーツ姿が新鮮でした。


見どころ

戦争の爪痕が色濃く残るフィリピン・マニラを舞台にした国際ビジネスの厳しい現場描写

現地の人々との文化的・歴史的摩擦や人間模様

商社マンたちの情熱と苦悩、そして成長の物語

直木賞受賞作にふさわしい重厚なストーリーと社会性


まとめ

『炎熱商人』は、国際ビジネスを舞台にした企業小説の名作でありながら、戦争の記憶や異文化理解の難しさも深く掘り下げた社会派作品です。

重厚ながらも軽妙なタッチが入り混じる文章は、長編ながら飽きさせません。国際ビジネスやフィリピンの歴史に興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

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