【映画レビュー】『きっと、うまくいく』が教えてくれた、「学ぶこと」の本当の意味

レビュー

インド映画で、人生がちょっと変わる体験をした

私は昔からインド映画が好きだ。最初はその華やかなダンスシーンに惹かれた。何の前触れもなく始まる歌と踊り、感情が溢れ出す瞬間に全力で盛り上げる音楽、画面越しに観客を巻き込むようなエネルギー。ストーリーの節目に差し込まれるそれらのシーンは、単なる装飾ではなく、物語の一部として、そして登場人物の「心の叫び」として見事に機能している。

そんな私が数年前、友人に勧められて出会ったのがこの映画、『きっと、うまくいく(原題:3 Idiots)』だった。ダンスや音楽だけではなく、インド映画の底力をまざまざと見せつけられた一本だ。今回はこの映画について、自分の感じたことを中心に綴っていきたい。

【楽天市場】ハピネット きっと、うまくいく/Blu−ray Disc/BIXF-0096 | 価格比較 - 商品価格ナビ
きっと、うまくいく/Blu−ray Disc/BIXF-0096の価格比較、最安値比較。【最安値 4658円(税込)】【評価:5】【口コミ:10件】(7/31時点 - 商品価格ナビ)【製品詳細:インド社会は“カースト制度”という言葉に代表さ...

「笑える」のに、なぜこんなに泣けるのか

この映画は、一見するとドタバタした青春コメディだ。主人公の一人ファルハーンが、かつての親友ランチョーを探すという目的で、かつての学友ラージュー、そして因縁のライバル・チャトルと共に旅をする。その旅のなかで、大学時代の回想が挟み込まれ、三人の若き日の姿が描かれていく構成だ。

だが、ただの青春懐古モノではない。テンポの良い笑いや突飛な演出の裏に、インド社会が抱える根深い問題、「教育とは何か」「成功とは何か」という鋭い問いが潜んでいる。

「試験は何度でもある。けれど父親は一人しかいない。」

このセリフに胸を打たれた人も多いのではないだろうか。たった一言で、登場人物の葛藤も、家族との関係も、教育の在り方も、すべてが浮かび上がる。この映画が凄いのは、そういった「人生の核心」を、笑いのなかに溶け込ませていることだと思う。


学歴社会という「現実」を描きながら、それを否定しない誠実さ

インドの工科大学を舞台にしたこの作品は、日本の受験社会にも通じるテーマを多く含んでいる。偏差値、成績、就職率。教育が数値化され、学生は競争という名のレースに放り込まれる。その先に待っているのは「成功」という名のゴールなのだろうか?

ランチョー(アーミル・カーン)が体現するのは、「学ぶこと」の本質だ。彼は試験のために勉強しない。自分の好奇心を追求すること、自分の頭で考えること、そして知識を人のために使うこと。彼の姿勢は、周囲の学生や教師、果ては学長までも巻き込んで、少しずつ学校という組織を変えていく。

それでも、彼はただ「型破り」で終わらない。論理的で知的な姿勢を貫き、必要なときには大胆な行動に出る。学歴偏重の社会を否定するのではなく、そこに「意味」を問い直す。このバランス感覚が、この映画の魅力でもある。


「All is well(うまくいく)」の魔法

この映画のキーワードは、「Aal Izz Well(アール・イーズ・ウェル)」、つまり「きっとうまくいく」。劇中では何度もこのフレーズが登場し、登場人物たちの心を落ち着かせる呪文のような役割を果たしている。

しかし、この言葉は単なる「ポジティブワード」ではない。どんなに厳しい状況でも、まずは落ち着いて考えること。視野を広げ、恐怖心を乗り越えること。そうした「生きる知恵」が込められているように思う。

印象的だったのは、主人公たちが学校で出産を助けるシーン。停電のなか、学んだ知識と創意工夫を総動員して命を救う姿に、知識が「人を救う力」になる瞬間を見た。これこそが、ランチョーが信じる「学びの力」なのだ。


ランチョーという「教育者」の出発点

ランチョーがなぜあそこまで強い信念を持っていたのか。その答えは、物語後半で明かされる。彼が「偽名」で大学に通っていたこと。彼が実は庭師の息子であり、誰よりも「学ぶこと」に飢えていたこと。彼にとって、知識は「自由」そのものだったのだ。

卒業後、彼は遠いラダックの地で学校をつくり、子どもたちに自由な発想で学ばせている。その姿はまさに「理想の教育者」。だが、それは映画の最初のシーン、友人との出会いから始まっていた。「学ぶとはどういうことか」を追い求めた旅路のなかで、彼自身が教育者になっていたという構図が感動的だ。


観終わったあと、晴れやかな気持ちになる映画

「きっと、うまくいく」は、3時間という長編にも関わらず、決して飽きることがない。ファルハーンとラージューの掛け合い、チャトルの滑稽なキャラ、ピアの芯のある行動力、そして何よりランチョーの存在感。そのすべてがバランスよく絡み合い、ドラマ、コメディ、社会批判、ミュージカルといったジャンルを超えて一つの「人生劇場」を築いている。

観終わった後、「自分ももっと自由に、もっと自分らしく生きてみよう」と思えた。学びは強制されるものではなく、自らの意志で選ぶもの。そして、学んだことは人のために使ってこそ、本当に意味を持つ。そんな当たり前だけど見失いがちなことを、この映画は教えてくれた。


最後に:映画の「踊り」と「リズム」が伝える感情

インド映画の醍醐味である「踊り」についても触れたい。『きっと、うまくいく』では、ストーリーの流れを断ち切ることなく、むしろテンポよく進める役割を果たしていた。

たとえば「Zoobi Doobi」というラブソングシーンは、ランチョーとピアの恋心を描きながらも、観ているこちらも笑顔になれるような軽やかさがある。また、「All Is Well」のシーンは、それぞれが抱える不安や恐怖を乗り越えていこうとする瞬間に、音楽とダンスが力強く背中を押してくれる。

言葉では伝えきれない感情を、音と身体の動きで表現する。それこそが、インド映画が多くの人の心を動かす理由なのだと思う。


総括:この映画は、人生を照らす「光」になる

『きっと、うまくいく』は、「学び」「友情」「家族」「愛」「自由」…人生のあらゆる側面を、決して説教くさくならずに、時に笑い、時に涙しながら伝えてくれる稀有な映画だ。私にとってこの映画は、何度観ても新たな気づきを与えてくれる、人生の指針のような存在である。

もしまだ観ていないなら、ぜひ観てほしい。そして、観たことがある人も、今の自分の目線で改めて観返してほしい。「学ぶこと」「自分らしく生きること」の意味を、きっと新たに感じられるはずだから。

Amazon.co.jp: きっと、うまくいく(字幕版)を観る | Prime Video
日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。エンジニアを目指す天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械より動物好きなファルハーン、なんでも神頼みの苦学生ラジューの“三バカトリオ”...

コメント

タイトルとURLをコピーしました