はじめに:不規則抗体って何?
「不規則抗体」というとちょっと難しく聞こえますが、要は通常の血液型検査(ABOやRh)では検出されない抗体のことを言います。
抗Aや抗Bのような“規則抗体”とは違って、妊娠や輸血をきっかけに作られることが多いです。
これらの抗体の一部は胎盤を通って胎児に影響し、溶血性疾患(HDFN)を起こす可能性があります。
検出されたらまずやること
Step1:不規則抗体が陽性になったら、まず種類(特異性)を特定!
これは何に対する抗体か?(例:抗E、抗c、抗Kなど)を調べることで、胎児への影響の有無が判断できます。
IgG抗体だったら要注意!
胎盤を通過するのはIgG抗体だけ。
したがって、溶血性疾患の原因となりうるIgG抗体であれば抗体価の測定が必要です。
■ 妊娠中にいつスクリーニングするの?
実施時期 | 推奨度 |
---|---|
妊娠初期(妊娠確定後) | A |
妊娠末期(28週以降) | C |
妊娠経過中に新たな抗体が作られる可能性があるため、初期と末期に2回スクリーニングするのが重要です。
抗体価が高かったらどうする?
以下のような管理を検討しましょう:
- 胎児貧血・胎児水腫のリスクを考慮した周産期管理
- NICUや輸血対応が可能な周産期センターとの連携
出生後の赤ちゃんも要注意
溶血性疾患を発症している可能性があるため、以下に注意します:
- 臍帯血でのHb・ビリルビンチェック
- 溶血性貧血や黄疸の早期対応
もし緊急輸血が必要な状況で、適合血が間に合わなかったら?
このような場合には、ABO型一致の赤血球製剤を使用することが検討されます(命優先)。
まとめ:不規則抗体が出たらこう動く!
対応 | ポイント |
---|---|
特異性の検索 | まずはIgGかどうかを確認 |
抗体価測定 | IgGなら必須。定期測定が望ましい |
妊娠末期にもスクリーニング | 妊娠中に出てくることも |
周産期管理 | 胎児貧血や新生児黄疸への備えを |
緊急輸血時 | ABO同型で対処もやむなし |
問題
妊娠中に抗E抗体(IgG型)が検出された。次に行うべき対応として最も適切なのはどれか。
A. 母体のIgE抗体測定
B. 出生後に直接クームス試験を行う
C. 抗体価の測定と定期的フォロー
D. 緊急帝王切開の準備
E. 血小板数のチェック
正解:C
解説
抗E抗体は胎盤通過性のIgG抗体であり、HDFNの原因となり得る不規則抗体です。
したがって、この段階で重要なのは、
- 抗体価の測定(どの程度の力を持つ抗体なのか)
- その後の定期的な抗体価の推移をモニタリング
です。
※AはIgE(アレルギー)で無関係、Bは出生後で今ではない、Dも時期尚早、Eは目的が異なります。
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