CQ008-2:妊婦で抗RhD抗体以外の不規則抗体が見つかったらどう対応する?

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はじめに:不規則抗体って何?

「不規則抗体」というとちょっと難しく聞こえますが、要は通常の血液型検査(ABOやRh)では検出されない抗体のことを言います。

抗Aや抗Bのような“規則抗体”とは違って、妊娠や輸血をきっかけに作られることが多いです。
これらの抗体の一部は胎盤を通って胎児に影響し、溶血性疾患(HDFN)を起こす可能性があります。


検出されたらまずやること

 Step1:不規則抗体が陽性になったら、まず種類(特異性)を特定!

これは何に対する抗体か?(例:抗E、抗c、抗Kなど)を調べることで、胎児への影響の有無が判断できます。


IgG抗体だったら要注意!

胎盤を通過するのはIgG抗体だけ。
したがって、溶血性疾患の原因となりうるIgG抗体であれば抗体価の測定が必要です。


■ 妊娠中にいつスクリーニングするの?

実施時期推奨度
妊娠初期(妊娠確定後)A
妊娠末期(28週以降)C

妊娠経過中に新たな抗体が作られる可能性があるため、初期と末期に2回スクリーニングするのが重要です。


抗体価が高かったらどうする?

以下のような管理を検討しましょう:

  • 胎児貧血・胎児水腫のリスクを考慮した周産期管理
  • NICUや輸血対応が可能な周産期センターとの連携

出生後の赤ちゃんも要注意

溶血性疾患を発症している可能性があるため、以下に注意します:

  • 臍帯血でのHb・ビリルビンチェック
  • 溶血性貧血や黄疸の早期対応

もし緊急輸血が必要な状況で、適合血が間に合わなかったら?

このような場合には、ABO型一致の赤血球製剤を使用することが検討されます(命優先)。


まとめ:不規則抗体が出たらこう動く!

対応ポイント
特異性の検索まずはIgGかどうかを確認
抗体価測定IgGなら必須。定期測定が望ましい
妊娠末期にもスクリーニング妊娠中に出てくることも
周産期管理胎児貧血や新生児黄疸への備えを
緊急輸血時ABO同型で対処もやむなし

問題

妊娠中に抗E抗体(IgG型)が検出された。次に行うべき対応として最も適切なのはどれか。

A. 母体のIgE抗体測定
B. 出生後に直接クームス試験を行う
C. 抗体価の測定と定期的フォロー
D. 緊急帝王切開の準備
E. 血小板数のチェック


正解:C

解説

抗E抗体は胎盤通過性のIgG抗体であり、HDFNの原因となり得る不規則抗体です。

したがって、この段階で重要なのは、

  • 抗体価の測定(どの程度の力を持つ抗体なのか)
  • その後の定期的な抗体価の推移をモニタリング

です。

※AはIgE(アレルギー)で無関係、Bは出生後で今ではない、Dも時期尚早、Eは目的が異なります。

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