不妊治療中の男性、コーヒーや紅茶の飲み過ぎに注意!?

最新医学トピック解説

~夫婦で歩む妊活と、ハーバード発の意外な研究結果~

「コーヒーが妊娠に影響!?」驚きの研究結果

不妊治療というと、どうしても「女性が頑張るもの」という印象が根強くあります。
しかし実際には、妊娠・出産は夫婦ふたりの協力で成り立つものです。

私は産婦人科医として、日々患者さんと向き合う立場にありますが、
実は私自身も、妻とともに妊活に取り組んだ経験があります。

なかなか子どもに恵まれず、妻は妊孕性外来に通っていました。
このことは、何ら恥じるべきことではないと私は思っています。
むしろ、これからの社会は、男性も自然に妊活に関わることが「当たり前」になるべきだと感じています。

そんな中、アメリカ・ハーバード公衆衛生大学院の研究チームが、
男性の普段の飲み物が、赤ちゃんを授かる確率に関係しているかもしれない」という興味深い研究結果を発表しました。


研究の内容:飲み物の種類と妊娠成功率

2025年3月にAndrology誌で報告されたこの研究では、
343人の男性とそのパートナーが対象となり、人工授精や体外受精など**714回の生殖補助医療(ART)**の成績が分析されました。

研究チームが注目したのは、妊娠前の男性が普段どんな飲み物を摂っていたかという点です。
検討された飲料のカテゴリは以下の4つ:

  • カフェイン入り飲料(コーヒー、紅茶など)
  • アルコール飲料(ビール、蒸留酒など)
  • 砂糖入り飲料
  • 人工甘味料入り飲料

精子の「質」には影響なし?でも生まれる確率に差!

研究の結果、これらの飲み物は精子の数や運動率など“精子の質”には影響がないことがわかりました。

ところが――
最終的な「生児出生率(=無事に赤ちゃんが生まれる確率)」には明らかな差が出たのです。


コーヒー・紅茶・蒸留酒はマイナスの影響

以下は、飲料の摂取量が最も少ないグループと、最も多いグループでの生児出生率の差と95%信頼区間(95% confidence interval)です:

  • コーヒー(カフェイン入り)
    • 少ない群:出生率 49%(95% CI: 38~61%)
    • 多い群:出生率 33%(95% CI: 24~43%)
  • 紅茶(カフェイン入り)
    • 少ない群:出生率 49%(95% CI: 33~51%)
    • 多い群:出生率 31%(95% CI: 22~41%)
  • 蒸留酒(ウイスキーなど)
    • 少ない群:出生率 45%(95% CI: 37~53%)
    • 多い群:出生率 32%(95% CI: 25~41%)

95%信頼区間とは?
たとえば「33%(95% CI: 24~43%)」とある場合、「同じ条件で何度も研究を繰り返したら、その結果の95%はこの範囲(24〜43%)に入るはず」という意味です。
統計的に“確からしさ”を示す指標で、信頼区間が狭いほど結果の信頼性が高いとされます。


ビールは逆にプラスの可能性も

  • ビール:出生率
    • 少ない群:32%(95% CI: 23~42%)
    • 多い群:51%(95% CI: 39~62%)

こちらは逆に、飲んでいた量が多い人の方が、出生率が高いという結果でした。
ビールにはポリフェノールやビタミンB群など、抗酸化や栄養に関係する成分が含まれており、これが好影響を与えている可能性があります。


なぜ見た目の“正常な精子”でも結果に差が出るのか?

精子の検査結果では「異常なし」でも、

  • DNAの損傷(断片化)
  • 酸化ストレス
  • 着床後の胚発育への影響

といった、**顕微鏡では見えないレベルでの“質の違い”**が、妊娠の成否に影響する可能性があります。
日々の飲み物に含まれる成分が、そうした要素に作用していると考えられているのです。


医師として、そして夫として伝えたいこと

この研究結果は、「男性が普段飲んでいるもの」が不妊治療の結果に影響しうるという、新たな気づきを与えてくれます。
でも、それ以上に私が強く伝えたいのは――

妊活は女性だけが頑張るものではない。夫婦で取り組むものです。

私自身、妊娠に至らない時期に悩んだこともありました。
しかし、お互いが「ふたりで乗り越えるものだ」と理解し合うことこそが、妊活の本質ではないかと今では感じています。


今日からできること:男性の妊活チェックリスト

  • コーヒー・紅茶は1日1杯以内を目安に
  • ウイスキーなどの蒸留酒は控えめに
  • ビールは飲みすぎず、週2~3回まで
  • パートナーの通院だけでなく、自分自身も「できること」を考える
  • 生活習慣の改善やサプリ、睡眠、禁煙なども効果的

最後に

不妊治療中は、精神的にも身体的にも本当に大変です。
でも、「小さなこと」――たとえばコーヒーを1杯減らすことでも、未来に繋がる一歩になるかもしれません。

妊活は、ひとりじゃありません。
パートナーと一緒に、時に支え合い、笑い合いながら、
「ふたりでつくる未来」に向かって進んでいく――
そんな社会が、もっともっと当たり前になりますように。

おまけ:夫婦で楽しむ、妊活中のちょっとした贅沢

コーヒーが好きな私としては、「控えましょう」と言うのは正直少し気が引けるところもあります。
でも、カフェインを減らすことが妊活に役立つなら、それはふたりの未来のための前向きな選択だと思えました。

私たち夫婦が実際に飲んでいたのは、UCCのカフェインレスコーヒー。手頃な価格で美味しくて、
今でも「夜寝る前にちょっとコーヒーが飲みたいな」というときにこれを淹れています。

高級品じゃなくても、夫婦で「ちょっとした気遣い」を共有することが、妊活の中では小さな幸せになるのだと感じています。

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参考論文

Salas-Huetos A, et al. The association of men’s beverage intake with semen quality and assisted reproduction outcomes in patients undergoing fertility treatment. Andrology. First published: 13 Nov 2024. DOI: 10.1111/andr.13795

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