日常に根づいた「一杯の習慣」から脳を守る?
朝の始まりに、仕事の合間に、リラックスしたい午後に。
コーヒーは現代人にとって、単なる嗜好品というよりも“生活の一部”です。
私自身も、日常的にコーヒーを飲んでいます。けれど、飲みすぎると夜眠れなくなってしまうこともあるので、「午後2時以降は飲まない」という自分ルールを設けています。
そんな「日常に根づいた一杯」のコーヒーに、なんと認知機能の保持や認知症予防の効果があるかもしれない。
こんなテーマの研究が2025年7月、Nutrition Journal誌に掲載されました。中国・内モンゴル医科大学のJinrui Li氏らの研究チームが挙げた、ただのエピソードに終わらないコーヒーの力。
研究概要:コーヒー、カフェイン、そしてALP
研究は、米国で行われた大型調査「NHANES」の2011年から2014年のデータを用いて、情報解析が行われました。
切り取られた小集団は60歳以上の2,254人。
評価には下記のような試験が用いられました:
- CERADテスト:記憶の評価
 - Animal Fluency Test:言語流智性
 - DSST:注意力や処理速度
 
これらをベースにして、コーヒー採取量、カフェイン採取、血清ALP値、そして遺伝子との関係などが解析されました。
主な結果と見解き
1 コーヒーの採取量と認知機能の関係
日約1日480g以上のコーヒーを飲む人は、飲まない人と比較して、CERADスコアが低下している確率が有意に低いことが分かりました。
- OR 0.58 (95%CI: 0.41〜0.82)
 
カフェイン入りのコーヒーを日約477.9g飲む人も同様の結果でした。
- OR 0.56 (95%CI: 0.34〜0.92)
 
2 ALPと認知機能の負の相関
血清ALP値の上位25%は、下位25%と比べて認知機能の低下風險が高い結果となりました:
- OR 1.82 (95%CI: 1.16〜2.85)
 
3 コーヒーはレビー小体型認知症を予防?
メンデルランダム化研究では、コーヒー採取量の増加が、認知機能障害の進行に関連する一方で、レビー小体型認知症の発症は予防する可能性が示されました。
- OR 0.24 (95%CI: 0.058〜0.96)
 
4 遺伝子としてのIGFLR1の関係
研究は、IGFLR1遺伝子がALPとの共展性を6300種のたんぱく質間相互作用ネットワークを用いて探索し、このルートでの治療的意義も指摘しています。
結論:「ただの嗜好」はデータにより変わる
これらの結果から、作者らは「カフェイン/コーヒー採取と認知機能には正の相関があり、ALPがその中起点となりうる可能性がある」としました。
当然、これらは解析結果に過ぎず、固めのエビデンスには至りません。ただし、コーヒーをラテマネーとして支払い、それを心の穴を埋めるためだけのものにしているなら、すこしだけその毎日の一杯を「認知症予防の視点」から見直すのもありかもしれません。
後は、コーヒーの飲みすぎや個人差も意識しながら、健康的な習慣として続けていけるかどうか。データを躍躇の節として、日常の味わい方を見直すキッカケになれば、それはその人にとって最高のプレベンションになりうると思います。
最後に――「結局どうなの?」という話
この研究で得られた知見を簡単に整理すると、次のように言えます:
- コーヒーやカフェインは、一定量なら高齢者の認知機能低下のリスクを減らす可能性がある
 - 特にレビー小体型認知症の発症予防に効果があるかもしれないという点は注目です
 - 一方で、飲みすぎは認知機能障害の進行と関連するという逆の結果も出ており、「適量」がカギです
 - ALPという酵素やIGFLR1遺伝子などの生理的要因も絡んでおり、単純な話ではありません
 
つまり、「コーヒーは認知症にいい」というのは一面的な理解で、適量・体質・生活習慣をふまえたバランスが重要だということですね。
参考文献
- Jinrui Li, Kai Yu, Fan Bu, Peng Li, Lei Hao. Exploring the impact of coffee consumption and caffeine intake on cognitive performance in older adults: a comprehensive analysis using NHANES data and gene correlation analysis. Nutr J. 2025 Jul 1;24:102. doi: 10.1186/s12937-025-01173-x.
PMCID: PMC12220005 / PMID: 40597402 
  
  
  
  

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