1. 減税論が支持を集める理由
物価高が続くなか、「消費税を下げてほしい」という声が高まるのは自然な反応だと思う。家計を預かる立場であれば、なおさらだろう。
ただ、医療現場で日々「制度の限界」に直面している身として、どうしても気になる点がある。
減税の議論は、“財源の議論”とセットで語られなければならないということだ。
税を下げること自体は簡単だ。
難しいのは、その後も医療・年金・介護・インフラを維持し続けることである。
2. 消費税は“安定財源”という特徴を持つ
税制にはそれぞれ長所と短所がある。
消費税の最大の利点は、景気変動の影響を受けにくく、安定した財源になることだ。
所得税や法人税は、景気が悪化すれば税収が急減する。
一方、消費税は生活が続く限り一定の税収が確保できる。
社会保障費が年々増加する日本において、この「安定性」は無視できない価値だ。
また、資産を多く保有する高齢層からも、消費行動を通じて負担を分かち合えるという特徴もある。
逆進性という課題はあるが、給付付き税額控除などで調整する余地は十分ある。
3. 現役世代を圧迫しているのは“社会保険料”
実際に現役世代の手取りを大きく削っているのは、消費税よりも社会保険料の上昇ではないだろうか。
給与明細を見ると、所得税よりも社会保険料の方が大きいケースも珍しくない。
さらに企業側も同額を負担しており、これは賃上げ余力を削ぐ要因にもなっている。
もし消費税を安定財源として活用し、社会保険料負担を少しでも軽減できるなら、
現役世代の可処分所得と企業活力の双方にプラスとなる可能性がある。
4. 医療費負担の世代間バランス
医療現場にいると、医療資源の限界を強く実感する。
高齢者医療費の自己負担割合は、現在世代間で差がある。
もちろん高齢者の生活に配慮は必要だが、
資産状況に応じた一定の自己負担の見直しは、持続可能性の観点から避けて通れない議論だと思う。
負担を分かち合うことで、医療制度そのものを将来世代に残せる。
それは“高齢者いじめ”ではなく、制度を守るための調整と捉える方が建設的ではないだろうか。
5. 成長する人が報われる税制
「高所得者から取ればよい」という意見にも一理はある。
ただ、過度な課税は人材や資本の海外流出を招くリスクもある。
努力し、挑戦し、成果を出した人が正当に報われる環境を保つことは、
長期的には雇用や税収の拡大につながる。
その意味でも、広く・薄く・安定的に集める税と、
成長を阻害しない制度設計の両立が重要になる。
6. 財源は「未来への投資」に使う
安定財源を確保できたなら、次に必要なのは生産性を高める投資だ。
物流コストの削減、インフラの最適化、医療DXなど、
国家が後押しすべき領域は多い。
「集める」だけでなく「どう使うか」まで示してこそ、
税制改革は国民の理解を得られる。
結び
減税か増税か。
感情的な二択ではなく、持続可能な制度をどう設計するかという視点が必要だと思う。
医療の現場で制度の限界を日々感じる立場として、
「安定財源の確保」と「世代間の公平」の両立は、避けて通れない課題だ。
完璧な解はない。
だが、現実を直視し、負担を分かち合いながら未来を支える。
その議論を始めること自体が、今の日本には必要なのではないだろうか。

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