CQ204:「反復・習慣流産患者の取り扱いは?」のガイドライン解説と国試対策問題

産科ガイドラインを勉強する

はじめに

反復流産や習慣流産(不育症)は、産婦人科診療の中でも繊細な対応が求められる重要なテーマです。本記事では、CQ204「反復・習慣流産患者の取り扱い」に基づいた最新ガイドラインの要点を、後期研修医・初期研修医・医学生向けにわかりやすく整理しました。
精神的ケアから抗リン脂質抗体症候群(APS)や染色体検査、甲状腺機能検査まで、反復流産・習慣流産に関する検査と治療戦略を網羅的に解説しています。さらに、医師国家試験対策にも活用できる問題演習も掲載しており、学習と実践を両立した構成です。


定義と頻度

  • 反復流産:2回以上の自然流産
  • 習慣流産:3回以上の自然流産
  • 発生頻度:反復流産は約2.6〜5.0%、習慣流産は約0.7〜1%
  • 国際的には「2回以上の妊娠の失敗(連続していなくても可)」を”Recurrent Pregnancy Loss (RPL)”と定義(ASRM/ESHRE)

精神的支援の重要性(推奨度B)

  • 流産はカップルに不安・抑うつ・怒り・喪失感を引き起こす
  • 精神的支援は流産の回数に関わらず必須
  • 女性は特に不安障害やうつ症状を呈しやすく、適切な声かけが大切

説明すべきポイント(推奨度B)

  • 加齢・既往流産回数は妊娠成功率を下げる
  • 原因が特定できないケースが多い
  • 原因不明でも、特に高齢でなければ次回妊娠の60〜70%は無治療で継続可能
  • 異数性の染色体異常が主な原因であることが多い

行うべき検査とその意義

抗リン脂質抗体(推奨度A)

  • LA, 抗カルジオリピン抗体, 抗β2GPI抗体の3つ
  • 抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断が重要
  • APSにはアスピリン+未分画ヘパリンが有効

カップルの染色体検査(推奨度B)

  • 均衡型転座は全体の2〜6%に存在
  • 遺伝カウンセリングが必須
  • 転座保因者に対する特異的治療は存在しない

子宮形態異常検査(推奨度A)

  • 3D経腟エコー、子宮卵管造影、MRI、子宮鏡など
  • 中隔子宮に対する手術の有効性は研究によって評価が異なる

流産組織の染色体検査(推奨度C)

  • 異数性か否かで今後の妊娠予後の見通しに差

甲状腺機能検査(推奨度C)

  • 顕性甲状腺機能低下症は治療対象
  • 潜在性・抗TPO抗体陽性例に対する治療効果は不明

治療方針のポイント

  • APS→アスピリン+未分画ヘパリン併用
  • 原因不明→確立された治療法なし
  • 精神的支援を継続(TLC:Tender Loving Care)
  • プロゲステロン腟剤の有効性も一部RCTで示唆

問題

30歳女性。不妊治療中で、これまでに3回の自然流産歴がある。今後の対応として適切なのはどれか。

A. 血液型不適合による不育の精査

B. カップルの染色体検査の実施

C. 抗核抗体のスクリーニング

D. 子宮頸管縫縮術の予定

E. 流産予防のためのアスピリン・免疫グロブリン併用療法の開始正解

正解:

 B

解説:

  • A:血液型不適合は反復流産の主因ではない→×
  • B:習慣流産と診断され、染色体異常の可能性がある→◎
  • C:抗核抗体の有用性は確立していない→×
  • D:子宮頸管無力症ではなく適応外→×
  • E:免疫グロブリンは確立されていない治療→×

まとめ

反復・習慣流産の診療は、原因検索とともに精神的支援が重要です。検査・治療の限界も理解した上で、個別に寄り添った対応が求められます。ガイドラインを通じて、科学と人間味のバランスのとれた診療を目指しましょう。

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