CQ009:分娩予定日はどうやって決まる?妊娠初期に知っておきたい予定日決定法

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1. そもそも分娩予定日って?

分娩予定日(EDD:estimated date of delivery)とは、妊娠40週0日目を指し、実際の出産日とは異なることが多いですが、 母児管理の基準となる大切な指標です。

NICUの判断や、早産・過期産・胎児発育不全(FGR)などの評価にも直結するため、できるだけ正確に、かつ早い段階で決める必要があります。


2. 予定日決定の優先順位

分娩予定日は妊娠初期(13週6日まで)に、以下の情報を使って決めます。優先順位は次の通りです。

1)排卵日・胚移植日が分かっているケース

  • 生殖補助医療(ART):体外受精・顕微授精などでは受精日や胚移植日が明確。
  • 胚の発育段階(例:胚盤胞なら移植日-5日)を基に妊娠2週0日を設定。

この情報があるなら最優先!

2)最終月経(LMP)と月経周期

  • 月経周期が整っており28日周期であれば、LMP+280日(40週0日)で予定日を計算。
  • 周期がずれる場合は補正が必要。

※ ただし、約半数で実際の週数とズレるという報告もあり、過信は禁物

3)超音波計測値(妊娠初期のCRL)

  • CRL(頭殿長):妊娠8週1日〜11週2日(14〜41mm)の範囲で誤差±3.9日。
  • 最終月経とCRLで7日以上ズレがある場合、CRLを優先して予定日決定。

▶ 妊娠11週以降は胎動の影響が出るため、**BPD(児頭大横径)**を用いる。


3. 妊娠中期以降に決める場合は?

やむを得ず妊娠中期以降に予定日を決める場合、

  • BPD
  • HC(頭囲)
  • AC(腹囲)
  • FL(大腿骨長)

などの超音波計測を使います。ただし、週数が進むほど誤差も大きくなり、28週以降では最大3週間のズレが生じることも。

▶ このため、**胎児の成熟度評価(Dubowitzスコアなど)**も必要になる可能性があります。


4. 予定日は途中で変えない!

妊娠初期に妥当な根拠で決定された予定日は、妊娠中期以降の超音波で変更しないのが原則です。

なぜなら、週数が正確であればこそ、

  • 胎児発育不全(FGR)
  • 過期妊娠
  • 妊娠合併症の発見 などが早期に可能になるためです。

5. 決定根拠の記録を忘れずに!

予定日を決めた際の**根拠(CRLの値、LMP、排卵日など)**は、必ずカルテに記載し、紹介時の診療情報提供書にも明記しましょう。

問題:以下のうち、分娩予定日の決定において最も妥当性が高く、優先して用いるべき情報はどれか。

A. 妊娠中期の超音波による児頭大横径(BPD)

B. 受精日が明確な体外受精の胚移植日

C. 最終月経日(28日周期)

D. 妊娠12週4日のCRL

正答:B

解説: 体外受精などで受精日・胚移植日が明確な場合は、最も信頼性が高く、予定日決定における最優先情報です。 最終月経やCRLも重要ですが、記憶違いや計測誤差のリスクがあるため、受精日が正確に分かっている場合にはそれに基づくのが基本となります。


まとめ

  • 予定日は「妊娠初期」に正確に決定!
  • 排卵日・胚移植日>最終月経>CRL(妊娠8-11週)
  • 決めた予定日は中期以降に変更しない!
  • 決定根拠はカルテ・紹介状に必ず記録

現場でも患者さんの不安を和らげられるよう、正確かつわかりやすい説明を心がけましょう。

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