CQ101:妊婦・授乳婦へのワクチン接種はどう対応する?

産科ガイドラインを勉強する

はじめに

妊婦さんや授乳中のお母さんから「ワクチンを打っても大丈夫ですか?」と質問されることは、日常診療でよくありますよね。

ワクチンには**「生ワクチン」と「不活化ワクチン」**があり、それぞれ妊婦や授乳婦に対する考え方が異なります。今回のCQ101では、それらのポイントをわかりやすく整理します。


1. 妊婦へのワクチン接種

原則:

  • 生ワクチンは禁忌(胎児への感染リスクがあるため)
  • 不活化ワクチンは原則接種可能(利益が上回る場合)

生ワクチンの例:

  • 風疹
  • 水痘
  • おたふくかぜ
  • 麻疹
  • 黄熱病(ただし渡航目的などで接種が必要な場合は例外)

注意!
誤って妊娠初期に生ワクチンを打った場合でも、多くは妊娠中絶の適応にはならないとされています。

不活化ワクチンの例:

  • インフルエンザ
  • B型肝炎
  • HPV(妊婦には接種推奨されない)
  • DPT(百日咳含む)

最近はWHOやCDC(米国)で、妊娠中に百日咳ワクチン(Tdap)を接種することで新生児への抗体移行が期待できるとされています(※日本では未承認ですがDPTの使用は有益性投与として可)。


2. 授乳婦へのワクチン接種

原則:

  • 生ワクチンも不活化ワクチンも接種可能

母乳中にワクチン成分や抗体が出ることはありますが、ほとんどの場合乳児に悪影響はありません

注意点:

  • 黄熱病ワクチン:授乳中の児が神経学的合併症を起こした例あり → 必要時のみ接種
  • 風疹ワクチン:母乳中に分泌されるが、無症候性感染であり、問題とはならない

3. 特別な例:新型コロナワクチン(mRNAワクチン)

  • 妊婦・授乳婦ともに接種可能
  • 特に妊娠後期の感染は重症化リスクがあるため、接種が推奨される
  • ワクチンによる流産・先天異常リスクは報告されていない
  • 授乳中は、母乳にワクチン成分は出ず、むしろ抗体が乳児を守る可能性あり

4. その他の注意点

  • 免疫抑制薬やステロイド内服中の生ワクチン接種は中止後数か月あける(通常3〜6か月)
  • 免疫グロブリン製剤を投与後は、生ワクチンの効果が落ちる可能性があるため3か月空ける

問題:

妊娠中の予防接種に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

A. 不活化ワクチンは妊婦に原則禁忌である
B. 生ワクチン接種後2週間以内の妊娠は妊娠中絶の適応となる
C. 妊婦に対する風疹ワクチンの接種は安全である
D. 生ワクチン接種は授乳中でも可能である
E. mRNAワクチンは妊婦では禁忌である

正解:D. 生ワクチン接種は授乳中でも可能である

解説:

  • A:不活化ワクチンは有益性があれば妊婦にも接種可能 → 誤り
  • B:生ワクチン接種後の妊娠でも中絶の適応にはならない → 誤り
  • C:風疹ワクチンは妊婦には禁忌(生ワクチン) → 誤り
  • D:授乳中の生ワクチン接種は原則OK → 正解
  • E:mRNAワクチン(新型コロナ等)は妊婦でも接種可能 → 誤り

おわりに

ワクチン接種は、母体の健康胎児・乳児の安全のバランスを考えて判断する必要があります。ガイドラインに沿って、「この状況なら接種していい・ダメ」を明確に判断できるようにしておきましょう。

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