はじめに:「今の自分のやり方」で本当に大丈夫なのか?
資産形成について考えるとき、「今の自分のスタイルは正しいのだろうか?」と自問することは、ときに必要だと思います。私は、毎月の給与から淡々とインデックス投資にドルコスト平均法で積立をしていく、ごくシンプルなスタイルで資産形成を行っています。つみたてNISAやiDeCoを活用しつつ、あとは証券口座にオルカン(全世界株式インデックスファンド)を放り込むだけ。いわば“何もしない投資法”とも言えます。
そして、残りのお金は生活や娯楽に自由に使うというルール。だからといって、資産を食いつぶすような無茶な使い方をしているわけではなく、むしろ“自分の価値観に合ったお金の使い方”を心がけています。健康や人間関係、経験に投資することが、人生の豊かさにつながると信じているからです。
それでも時には、「他にもっと効率のいいやり方があるのでは?」と感じる瞬間がある。そんなときに手に取った一冊が、今回紹介する橘玲さんの『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』でした。
書籍の概要:制度の歪みを「戦略」に変える
この本のテーマは、ズバリ**「制度の歪みを活用してお金持ちになる方法」**。橘さんは、私たちが暮らす社会には「黄金の羽根」と呼ばれる“歪み”が存在し、それを見つけて活用することで誰でも経済的自由を得られると説いています。
「黄金の羽根」とは、簡単に言えば制度の隙間から得られる利益。不平等であるがゆえに生じる“得”の部分であり、それに気づけるかどうかで、人生の経済的な自由度が大きく変わってくるのです。
資産形成の基本式とその意味
本書の中心にあるのが、この非常にシンプルな数式です。
資産形成 = (収入 – 支出)+(資産 × 運用利回り)
これは、多くの投資本でも語られる基本原則ですが、橘さんはこの式をベースに、
- 収入を増やす方法(自己投資、共働き)
 - 支出を減らす戦略(住宅費、保険、通信費などのカット)
 - 資産を効率的に運用するための仕組み(法人化、副業)
 
などを具体的に解説していきます。
勤務医として読んで感じた“違和感”と“納得”
私は勤務医という職業柄、法人化による節税メリット(いわゆる“マイクロ法人”の設立)については、残念ながらあまり現実的ではない立場です。というのも、医療法人の設立には厳しい要件があり、また勤務医である以上、主たる収入は給与所得として源泉徴収されてしまうため、節税の余地は限定的です。
つまり、「法人化して税金を減らそう!」というこの本の最大の武器は、私にとってはあまり刺さらなかったというのが正直な感想です。
しかし、それでもこの本には読む価値がありました。
なぜなら、制度という“見えない壁”に対しての視点が養われるからです。例えば、
- 住宅費は人生最大のコスト
 - 生命保険は不要な支出になりがち
 - 格安SIMに変えるだけでも固定費は削減できる
といった話は、医師に限らず、どんな職業の人にも通じる考え方です。 
また、「収入が増えなくても支出を減らせば資産は増える」という視点は、誰にでも実行可能な再現性のある方法だと感じました。
「資産を守る」視点を得たことの意義
もう一つ、本書を読んで学んだのは「稼ぐ」だけでなく「奪われないようにする」という視点の重要性です。高所得であっても税や保険料で多くを持っていかれるサラリーマン(=勤務医もその一例)は、国家からの“搾取”に気づきにくい立場にあります。
私たちは日々、仕事をしてお金を得ていますが、その多くが自分の手元に残っていないという現実をどれだけ認識しているでしょうか?本書はその点に鋭く切り込んでくれます。
そして、この“奪われない”という考え方は、インデックス投資一辺倒の私にも響きました。たとえ投資で資産が増えても、税金や不必要な保険料で減っていくのであれば、意味がないということです。
「自分なりの最適解」を持つことの大切さ
もちろん、橘さんの提案すべてを鵜呑みにする必要はありません。たとえば、
- 不動産投資にリスクを感じる人
 - 法人設立にハードルを感じる人
 - 共働きが現実的でない家庭
など、人によって向き不向きがあるのは当然です。 
大切なのは、こうした本を読みながら**「自分にとってはどうか?」を問い続ける姿勢**だと思います。私にとっての最適解は、あくまで「インデックス投資+生活の最適化」ですが、そこに本書の知識を付け加えることで、制度的な損失を減らす視点が持てるようになりました。
まとめ:「制度に対する知識」は最大の防御
『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』は、単なるお金儲けのテクニック本ではなく、制度の中でどう生き抜くかを指南する一冊です。情報に対する感度を高め、行動に結びつける力を養うという意味では、非常に実践的かつ本質的な内容でした。
私のように「王道の積立投資」スタイルで資産形成している人にとっても、本書は決して無関係ではありません。むしろ、そういうスタイルだからこそ制度への理解を深めることが必要です。なぜなら、「知らなかった」だけで損をしてしまうことが、社会には数多く存在しているからです。
「自分のやり方が正しいのか?」と不安になったとき、道標となってくれる一冊です。
こんな人におすすめ!
- インデックス投資だけでは不安な人
 - 固定費をもっと削減したいと考えている人
 - フリーランスや個人事業主の節税に関心がある人
 - 資産形成の「次の一手」を模索している人
 
書籍情報
 新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方
著者:橘 玲
出版社:幻冬舎文庫
  
  
  
  

コメント