CQ108:妊婦の喫煙・受動喫煙の影響とは?

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はじめに

妊婦の喫煙が胎児や小児の健康にどれほど悪影響を及ぼすか、国家試験でも頻出のテーマです。
今回は、**日本産科婦人科学会のCQ108「妊婦の喫煙(受動喫煙を含む)について」**の内容を、臨床と国家試験の両方に役立つように噛み砕いて解説します。


妊婦と喫煙:なぜ問題視されるのか?

妊娠初期にやるべきこと

  • 妊婦本人とその周囲の喫煙状況を問診で確認します(パートナーも重要)。
  • 特に受動喫煙の有無も聞くこと。
    → これは**CQ002「妊婦健診の基本情報収集」**ともリンクします。

なぜ喫煙は問題なのか?(エビデンスに基づく悪影響)

喫煙だけでなく、受動喫煙でも以下のようなリスクが報告されています。

妊娠・分娩への影響

  • 流産(1.7〜2倍)
  • 早産・前期破水・絨毛膜羊膜炎
  • 常位胎盤早期剝離、前置胎盤(2〜3倍)
  • 胎児発育不全、児の低出生体重(喫煙本数に相関)
  • 胎児奇形(口唇口蓋裂、先天性心疾患、手足の欠損など)

出生後の児への影響

  • SIDS(乳児突然死症候群)
  • 小児喘息、中耳炎、神経発達障害(ADHD、学習障害、うつ)
  • 小児がん(神経芽細胞腫)

禁煙指導の実際

妊娠は「禁煙のチャンス」

  • 妊婦は禁煙意欲が最も高まる時期
  • 実際に「妊娠したから禁煙したい」が最も多い禁煙理由。

どう伝える?(指導のポイント)

  • 妊婦だけでなくパートナーにも禁煙指導を。カップル単位での対応が必要。
  • **「ヒトの健康、妊娠予後、胎児、小児すべてに悪影響がある」**と明確に伝える。
  • 電子タバコ・加熱式タバコも例外ではない。

加熱式タバコや電子タバコは安全?

安全ではない

  • 加熱式タバコにもニコチン・発がん物質が含まれる
  • 喫煙者の呼気に含まれるPM2.5は2メートル先まで拡散
  • 電子タバコのエアロゾルにも有害成分が含まれ、受動喫煙でも影響あり

法制度と公衆衛生

  • 2018年の健康増進法改正、2020年全面施行で「スモークフリー法」施行
  • この法改正後、早産率などが実際に低下したとする報告あり
    → 医療現場だけでなく社会的なアプローチが重要です。

Talk to Your Patient

  • 受動喫煙も含めた環境をしっかり問診で拾い、禁煙支援は個人ではなく「家族単位」で考えることが鍵です。
  • 禁煙外来の紹介や、禁煙支援マニュアルも活用しましょう。

問題

30歳、初産婦。妊娠12週で初回妊婦健診に来院。問診票に「本人は非喫煙者だが、夫が1日10本喫煙している」と記載あり。今後の対応として適切でないものはどれか。

A. 夫に対しても禁煙指導を行う
B. 加熱式タバコなら受動喫煙の心配はないと説明する
C. 受動喫煙による胎児への影響を説明する
D. 禁煙の動機として妊娠が良い契機になることを伝える
E. 禁煙支援マニュアルに沿った指導を行う


正解

B


解説

  • 加熱式タバコや電子タバコも健康に悪影響があるとされており、受動喫煙でも胎児への影響が報告されています。
  • ガイドラインでは明確に加熱式タバコも有害とされています。
  • よって、「加熱式タバコなら心配ない」とする選択肢は誤りです。

まとめ

  • 妊婦とその周囲の喫煙状況の確認は、妊娠初期の重要な問診項目
  • 受動喫煙も含め、妊娠・出産・児の健康に重大な影響を及ぼす。
  • 禁煙支援は、妊婦本人だけでなく、パートナー・家族も含めた全体支援が必要です。
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