CQ107:妊娠中の運動(スポーツ)ってしても大丈夫?

産科ガイドラインを勉強する

はじめに

妊婦さんに「運動しても大丈夫ですか?」と聞かれること、ありますよね。かつては「なるべく安静に」と言われることもありましたが、**近年のエビデンスは“安全で適切な運動は母体にも胎児にもプラスになる”**と教えてくれています。

今回は、産婦人科ガイドラインの**CQ107「妊娠中の運動」**をもとに、禁忌や注意点、有益性について整理してみましょう!


妊娠中の運動、基本スタンスは?

適度な有酸素運動は「OK」どころか「推奨」!

妊娠中の**軽〜中等度の有酸素運動(ウォーキング・マタニティヨガ・水中運動など)**は、

  • 妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の予防
  • 帝王切開率の低下
  • 心身の健康維持
    といった点で効果が期待されています。

👉ただし、「適度」が重要。**“Talk Test”(運動中に楽に会話できる程度)**でコントロールしましょう。


これはNG!妊娠中に避けるべきスポーツ

妊婦さんに以下のスポーツは避けるように指導しましょう。

具体的にNGなもの

  • 転倒や衝突のリスクが高い運動(スキー、乗馬、柔道など)
  • 競技性が強い運動(長距離マラソン、スプリント競技など)
  • 仰臥位で長時間行う運動(妊娠中期以降)
  • 長時間の直立保持(血流がうっ滞して気分不良のリスク)

そもそも運動しちゃいけない人とは?

以下のような妊婦さんには運動を勧めません。

  • 重篤な心疾患や呼吸器疾患
  • 頸管無力症
  • 持続する性器出血
  • 前置胎盤/低置胎盤
  • 前期破水
  • 切迫流産・切迫早産
  • 妊娠高血圧症候群

  つまり、**「安静指示が出るようなリスク妊娠」**の方には運動NG。


運動中にこんな症状が出たら中止!

妊婦さんが運動中に以下の症状を訴えたら、即中止して医療機関に相談するように指導しましょう。

  • 立ちくらみ・頭痛・胸痛・呼吸困難
  • 下腿の腫れや痛み(血栓症リスク)
  • 腹部緊満感・下腹部の重圧感
  • 子宮収縮、性器出血、胎動減少
  • 羊水流出感

まとめ(覚えておくべきポイント)

項目ポイント
妊娠中の運動軽〜中等度の有酸素運動は基本OK
禁忌となる状態心疾患・前置胎盤・切迫早産など
避けるべき運動転倒・接触・仰臥位の運動など
中止すべき症状出血・呼吸困難・下肢症状など

問題

32歳の初妊婦。妊娠24週、特に合併症はない。体重増加が気になり「軽い運動をしても大丈夫ですか?」と相談を受けた。適切な対応はどれか。1つ選べ。

A. 運動は胎児の早産リスクを高めるため原則禁止とする
B. 軽いストレッチやマタニティヨガは避けるように勧める
C. 毎日30分以上の中等度の有酸素運動を勧める
D. 仰臥位での筋トレを勧める
E. 低置胎盤が疑われるのでまず運動を中止する


正解

C. 毎日30分以上の中等度の有酸素運動を勧める


解説

この症例では健康な妊婦であり、特に禁忌はありません。よって、ウォーキングなどの有酸素運動を日常的に行うことは推奨される(米国・カナダのガイドラインでも1日30分以上の運動が目安とされています)。

  • A:妊娠中の適度な運動は早産リスクをむしろ低減
  • B:マタニティヨガはOK
  • D:仰臥位は妊娠中期以降避けるべき
  • E:低置胎盤の記載がない

おわりに

妊娠中の運動指導は、「やっていいのかダメなのか?」ではなく「どんな内容なら安全か?」を伝えることがカギ。
妊婦さんが安心して体を動かし、健康的な妊娠生活を送れるようサポートしていきましょう!

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