はじめに
妊娠前の体格(BMI)や妊娠中の体重増加量が、母児の予後に大きく関わることがわかっています。しかし、どこまで管理すればよいのか、個別にどう指導するかは難しいところ。
今回は、ガイドライン CQ010をもとに、臨床で役立つ知識をわかりやすく整理しました。
妊娠前の体格がもたらすリスク
妊娠前のBMIが18.5未満(やせ)または25以上(肥満)の場合、それぞれ異なるリスクが指摘されています。
体格 | 主なリスク |
---|---|
やせ(BMI <18.5) | 切迫早産、早産、貧血、SGA、低出生体重児などのリスク増 |
肥満(BMI ≥25) | 妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開、巨大児などのリスク増 |
※BMIは自己申告の妊娠前体重を用いて算出。
海外との違い
- 日本ではBMI 25以上を肥満としますが、
- 欧米ではBMI 30以上を肥満、25〜29.9をoverweight(過体重)と分類します。
そのため、日本のガイドラインではより厳しめの基準をとっています。
妊娠中の体重増加量の目安は?
妊娠中の体重増加量が少なすぎると、SGAや早産のリスクが増加し、逆に多すぎるとLGA、巨大児、帝王切開のリスクが上昇します。
推奨される体重増加量(単胎妊娠)
妊娠前BMI | 推奨体重増加量 |
---|---|
<18.5 | 12~15kg |
18.5~24.9 | 10~13kg |
25.0~29.9 | 7~10kg |
≧30.0 | 個別対応(上限5kg程度) |
これは、日本産科婦人科学会の最新データに基づいて設定された推奨値です。
栄養指導の基本ポイント
妊娠中の体重コントロールは、厳しすぎず、個人に応じた調整が重要です。
- 栄養はバランスよく(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)
- 初期・中期・後期でカロリーの目安が異なる:
- 妊娠初期:+50 kcal/日
- 中期:+250 kcal/日
- 後期:+450 kcal/日
- 授乳期は妊娠前より+350 kcal/日が目安
多胎妊娠の場合
日本では明確な基準はないが、胎児数に応じて増加量は多めになります。
アメリカのIOMガイドラインでは双胎の場合:
妊娠前BMI | 推奨体重増加量(双胎) |
---|---|
18.5~24.9 | 16.8~24.5kg |
25.0~29.9 | 14.1~22.7kg |
≥30 | 11.4~19.1kg |
まとめ:指導のポイント
・妊婦の体格に応じた体重増加目安を意識
・ 厳しすぎず、個別対応で
・ やせすぎも太りすぎも、母児ともにリスクあり
・ 妊娠中の栄養は質とバランスが最重要
問題:
妊娠前BMIが16.5の妊婦に対して、妊娠中の体重増加量の指導として適切なのはどれか。1つ選べ。
A. 5kg以内に抑えるよう指導する
B. 妊娠中の体重増加は必要ない
C. 7~10kgの体重増加が望ましい
D. 10~13kgの体重増加が望ましい
E. 12~15kgの体重増加が望ましい
正答:E. 12~15kgの体重増加が望ましい
解説:
BMIが18.5未満の「やせ」に該当する妊婦では、早産やSGAのリスクが高くなるため、適切な体重増加が必要です。ガイドラインではこの層に対し、12~15kgの体重増加が推奨されています。
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