CQ302:切迫早産の診断と管理のポイント

産科ガイドラインを勉強する

はじめに

妊娠22週から妊娠36週6日までの間に「早産になる可能性が高い状態」を、私たちは「切迫早産」と診断します。今回は、その診断と管理について、2023年の産婦人科診療ガイドラインに基づきながら、重要なポイントを整理してみましょう。


切迫早産とは?

まず、どんなときに「切迫早産」と診断するのか?

  • 妊娠22週0日〜36週6日
  • 規則的な子宮収縮+頸管開大 or 展退が進行している
  • 初診時の子宮口開大が2cm以上であれば、それだけでリスクが高いと判断

また、腟分泌液中の**胎児性フィブロネクチン(fFN)**陽性も早産リスクの指標になります。


常位胎盤早期剝離との鑑別も大切!

切迫早産と似たような症状を示す代表例が常位胎盤早期剝離。子宮収縮+胎児心拍数異常がある場合には、剝離の可能性も疑って慎重に対応しましょう(特に急変するケースでは要注意)。


管理の基本方針

分娩を遅らせる必要がある場合

以下の対応を検討します:

  • 子宮収縮抑制薬(例:リトドリン、硫酸マグネシウム)
  • 高次施設への母体搬送(NICUでの新生児管理が必要な場合)
  • 妊娠32週未満で早産が予測される場合 → 硫酸マグネシウムで胎児の脳保護

薬の副作用に注意!

  • リトドリン:頻脈、低K血症、肺水腫など
  • 硫酸マグネシウム:腱反射低下、呼吸抑制
  • 両者ともに48時間以内の使用が推奨される

肺成熟促進のためのステロイド投与

早産が近い場合は、胎児の呼吸障害を防ぐため、以下のタイミングで**ベタメタゾン筋注(12mg × 2回)**を投与:

  • 妊娠24〜34週未満(推奨:B)
  • 妊娠22〜24週未満(推奨:C)

ただし、**複数回投与のリスク(発育障害、神経発達への影響など)**があるため、基本は1クール。


GBS対策(新生児早発型GBS感染症の予防)

切迫早産では、GBS培養検査を早めに実施し、必要に応じて分娩時に抗菌薬を投与します。


抗菌薬は全員に使う?

未破水で感染の兆候がなければ、ルーチンの抗菌薬投与は推奨されていません。ただし、臨床的絨毛膜羊膜炎が疑われた場合は、CQ303に基づいて管理します。


問題

28歳、妊娠28週の初妊婦。下腹部の張りと痛みを主訴に来院。内診で子宮口は2cm開大し、腟分泌液中胎児性フィブロネクチン陽性であった。胎児心拍に異常はなく、血液検査で白血球数とCRPに異常なし。適切な対応として最も適切なのはどれか

A. リトドリンの長期内服開始
B. 母体に抗菌薬を投与開始
C. 硫酸マグネシウムによる脳保護開始
D. NICUのある施設への母体搬送
E. ベタメタゾン12mg筋注を2回投与

正解

E. ベタメタゾン12mg筋注を2回投与


解説

  • 子宮口2cm開大+子宮収縮=切迫早産
  • fFN陽性=早産リスク高
  • 妊娠28週 → ベタメタゾンによる肺成熟促進が重要(分娩が近い可能性があるため)
  • 抗菌薬は感染兆候がないため不要
  • 硫酸マグネシウムは脳保護目的で使うが、NICU管理可能であれば搬送も考慮

まとめ

項目ポイント
診断基準妊娠22〜36週、子宮収縮+頸管開大など
管理子宮収縮抑制薬+肺成熟促進ステロイド
副作用リトドリン:頻脈、Mg:呼吸抑制
感染管理絨毛膜羊膜炎疑い時に抗菌薬
予防GBS培養・適切な抗菌薬投与

コラム:早産の不安に寄り添って
切迫早産と診断され、不安な気持ちになるのは当然のことです。早産で生まれてきたお子さんの中にも、医療のサポートを受けながら健やかに成長しているケースはたくさんあります。もちろん、経過には個人差がありますが、「今できることを一つずつやっていくこと」が大切です。どうか一人で悩まず、主治医や周囲に相談しながら過ごしてほしいと思います。

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