この記事でわかること
- 通常の妊婦健診で行われる超音波検査と「胎児超音波検査」の違い
- 超音波検査を実施する上で必須となるインフォームドコンセント
- 胎児形態異常発見に備えるための体制と説明内容
はじめに:超音波検査も「出生前検査」です
妊婦健診で日常的に行われる超音波検査。しかし、その何気ない検査が実は**「出生前検査」のひとつ**であることをご存じでしょうか?
CQ106-2では、「通常超音波検査」と「胎児超音波検査」の違いを理解し、検査の目的・意義・告知範囲などを妊婦に説明した上で文書で同意を得ることの重要性が強調されています。
通常超音波検査 vs 胎児超音波検査
| 検査種別 | 主な目的 | 実施対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 通常超音波検査 | 妊娠経過・胎児発育の評価 | 全妊婦 | 健診の一環、標準的に実施 |
| 胎児超音波検査 | 胎児形態異常のスクリーニング | 妊婦の希望により実施 | 特別な研修を受けた者が担当。保険適用に制限あり |
注意点:
妊婦自身がこの2つの検査の違いを理解していないことも多く、事前説明が非常に重要です。
超音波検査時の留意点(時期別)
妊娠初期(〜14週)
- 異所性妊娠・枯死卵・胞状奇胎などの確認
- 胎児の数、妊娠週数、子宮・付属器の形態異常などの評価
妊娠中期・末期(15週〜)
- 胎児発育・胎位・胎向、胎盤の位置、羊水量の評価
- 子宮頸管長の確認(早産リスクの評価)
胎児超音波検査の実施タイミング(推奨時期)
胎児の形態異常スクリーニングとして、以下の3回のタイミングが推奨されています:
- 妊娠10〜13週
- 妊娠18〜20週(形態異常の検出率が高い)
- 妊娠28〜31週
倫理的配慮と事前準備
- 異常を意図せず発見する可能性があることを検査前に説明しておく
- 発見時の対応や告知の範囲についても、施設としてあらかじめ方針を決めておく
- 胎児形態異常のスクリーニングは、必ずしも異常を見逃さないわけではない(検出率:16〜44%)
問題
30歳の妊婦、妊娠20週で来院。通常の妊婦健診で超音波検査を行う予定である。妊婦と夫から「胎児に異常があるか知りたい」と希望があった場合の対応として正しいのはどれか。
A. 通常の健診の一環として特別な説明なく超音波検査を行う
B. 胎児超音波検査の実施を拒否する
C. 通常超音波検査でも形態異常が偶然見つかる可能性を説明する
D. 超音波検査で異常が見つかれば必ず治療できると説明する
E. 全妊婦に対して妊娠18〜20週での胎児超音波検査を義務付ける
【正解】
C. 通常超音波検査でも形態異常が偶然見つかる可能性を説明する
【解説】
- A:通常超音波検査も「出生前検査」であり、事前説明と文書での同意が必要。
- B:胎児超音波検査は希望に応じて実施可能。拒否は不適切。
- C:正しい選択肢。通常検査であっても、異常が偶然見つかる可能性があることを事前に説明する必要がある。
- D:胎児異常の中には治療困難・致死的疾患も存在するため誤り。
- E:全妊婦への義務化は行われておらず、希望と適応に応じて実施する。
まとめ
- 通常の超音波検査も出生前検査の一種であり、倫理的・法的配慮が必須
- 胎児超音波検査は妊婦の希望により実施、検査内容と目的を明確に伝える
- 事前のインフォームドコンセント、検査後のフォロー体制の整備が極めて重要

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