CQ106-3:NT(Nuchal Translucency)値の計測とは?

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はじめに

NT(Nuchal Translucency:頸部透亮帯)値の計測は、胎児の頸部後方の皮下に一時的に存在する液体の厚みを測定する検査で、出生前検査の一つに位置付けられます。

NT高値は、胎児染色体異常(例:21トリソミー)や先天性心疾患などとの関連が指摘されていますが、**非確定的検査(スクリーニング)**であることが重要な前提です。


NT計測の意義と位置づけ

1. NTは「非確定的な出生前検査」

  • NT計測は妊娠11週0日〜13週6日の間に、超音波で胎児頸部後方の液体の厚みを測る方法。
  • 染色体異常(主に21, 18, 13トリソミー)のリスクを評価する目的で使われます。
  • ただし、NT値だけで診断はできず、「異常の可能性があるかどうか」をスクリーニングする目的で用います。

2. 実施には遺伝カウンセリングとインフォームドコンセントが必要

  • 検査を希望する妊婦には、検査の意義、限界、結果が示す可能性について十分に説明し、同意を得た上で実施します。
  • 意図せず超音波検査中にNT高値を疑った場合には、あらかじめ施設内で方針を定めておく必要があります(CQ106-2参照)。

注意点|偶然NT高値を発見した場合は?

  • 妊婦本人がNT検査を希望していない中で、通常の超音波検査中に偶然高値を発見することがあります。
  • このような場合、告知の有無や今後の対応方針を施設内で統一しておくことが大切です。
  • 胎児超音波や遺伝カウンセリングができる施設に紹介するという選択肢も。

NT高値で次に考えること

  • NT値が高い=異常確定ではありません。
  • 染色体異常の有無を確定するには、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査が必要です(CQ106-5参照)。
  • 染色体が正常でも、先天性心疾患、臍帯ヘルニアなどの頻度が上昇する可能性があります。

正しいNT計測条件とは?

  • 測定時期:妊娠11週0日〜13週6日
  • 胎児正中矢状断面を捉える
  • 胎児の姿勢は軽度屈位が望ましい(過屈位/反屈位では誤差あり)
  • 胎児の頭部と胸郭上部が画面に収まるように拡大して測定

問題

妊娠12週の妊婦が胎児超音波検査で頸部後方に厚さ2.8mmの透明帯を認められた。NT(nuchal translucency)値が高値とされた場合の対応として正しいのはどれか。

A. 即座に中絶の適応を説明する
B. 胎児は全例で染色体異常を有すると説明する
C. 胎児染色体検査を行う前に遺伝カウンセリングを行う
D. NT値が正常であれば染色体異常は否定的である
E. NT値の計測には妊娠20週以降が適切である


正解

C. 胎児染色体検査を行う前に遺伝カウンセリングを行う


解説

  • NT値の計測は非確定的検査であり、染色体異常のリスク評価を行うためのものです。
  • 高値であった場合、確定的検査(羊水検査など)を行う前に、遺伝カウンセリングを提供することが必須です。
  • AとBは不適切。高値でも90%以上が無病生存するケースもあるとされ、即中絶や「全例異常」とは言えません。
  • Dは誤り。NTが正常でも染色体異常は否定できません。
  • Eも誤り。NT計測は妊娠11週0日〜13週6日が適正な期間です。

まとめ

項目要点
検査目的染色体異常などのスクリーニング(非確定的)
実施条件妊娠11週0日〜13週6日/正中矢状断面で計測
実施前遺伝カウンセリング+インフォームドコンセント
高値の場合羊水検査・絨毛検査を検討、他のソフトマーカーとの併用も考慮
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