はじめに
流早産は妊娠経過の中でも極めて重大なアウトカムの一つであり、その予防と管理は産科医療において重要なテーマです。特に頸管無力症は、症状が乏しいまま子宮口が開大してしまうため、適切なスクリーニングと対応が必要です。今回は、頸管無力症を含む早産ハイリスク妊婦の抽出方法とその管理について、最新のガイドラインに基づきわかりやすく解説します。
流早産ハイリスクとされる主な背景因子
以下のような既往歴や現症がある妊婦は、早産のリスクが高いため注意が必要です。
■ 既往歴
- 後期流産や早産の既往
- 子宮頸部円錐切除術歴
- 広汎子宮頸部摘出術後
■ 現症
- 多胎妊娠
- 頸管短縮(子宮頸管長25mm未満)
- 細菌性腟症
有効なスクリーニング方法:経腟超音波での頸管長測定
妊娠18~24週に経腟超音波で子宮頸管長を測定することで、早産リスクの高い妊婦を抽出することができます。頸管長が25mm未満であれば注意が必要です。
【豆知識】子宮頸管長が20mm未満の場合、早産率は75%という報告も。
頸管無力症が疑われた場合の対応
■ 妊娠前の診断や強く疑われる場合:
- 経過観察 or 予防的頸管縫縮術(妊娠12週以降の早期に)
■ 頸管長が短縮してきた場合:
- 治療的頸管縫縮術を考慮(特に24週未満かつ25mm未満)
■ 明らかな子宮口開大・胎胞形成を伴う場合:
- 治療的縫縮術は新生児生存率や妊娠期間延長に効果あり
感染が疑われる場合は?
感染徴候(発熱・白血球増多・CRP高値など)がある場合には、縫縮術は原則として行わず、まず感染の治療を優先します。不顕性感染があっても縫縮術が逆効果になる可能性があるため、慎重な判断が求められます。
黄体ホルモン療法について
頸管短縮例や早産既往例に対する腟内プロゲステロン療法には、一定の早産予防効果があるとされています。
17-OHPC筋注は有効性が否定され、2023年にFDA承認が取り消されました。
適応外使用であること、リスク説明とインフォームドコンセントが重要です。
経腹的頸管縫縮術の適応
経腟的縫縮術が困難だった場合や失敗に終わった妊婦には、経腹的予防的頸管縫縮術(開腹 or 腹腔鏡)を次回妊娠時に検討します。通常、妊娠12週前後に実施されますが、実施には高次医療施設での慎重な対応が必要です。
問題
32歳の妊婦。妊娠18週。第1子は妊娠22週での自然流産だった。今回の妊娠では現在までに異常所見はないが、超音波で子宮頸管長が22mmと測定された。この場合の対応として適切なのはどれか。
A. 治療的頸管縫縮術を行う
B. 黄体ホルモン療法は禁忌である
C. 経腹的頸管縫縮術をすぐに行う
D. 経過観察とし、24週で再評価する
E. 子宮口の内診評価のみで十分である
正解
A. 治療的頸管縫縮術を行う
解説
頸管長が25mm未満(本例は22mm)かつ早産・流産歴があるため、治療的頸管縫縮術が推奨される症例です。黄体ホルモン療法も適応になり得ますが、選択肢にある中では最も適切なのはA。Dは緊急対応を要する状況であり不適切。Cは経腟的縫縮術が第一選択であるため時期尚早。
まとめ
- 早産ハイリスク妊婦を早期に見極め、適切な対応を取ることが重要
- 頸管長測定は18~24週が目安
- 頸管無力症への対応は経過観察か縫縮術、状況に応じた使い分け
- 感染徴候があれば縫縮術は避ける
- 黄体ホルモン療法は腟内使用が主流で、慎重なインフォームドコンセントを


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