CQ106-1:妊娠中の胎児異常が心配と相談されたら?出生前検査の基本をやさしく解説

産科ガイドラインを勉強する

はじめに

妊婦健診の場で、「赤ちゃんに異常があったらどうしよう…」という不安の声は少なくありません。特に妊娠初期〜中期は、形態異常の検出や遺伝子・染色体異常を含めた出生前検査のタイミングでもあります。

今回は、日本産科婦人科学会ガイドライン2020におけるCQ106-1の内容をベースに、胎児異常に関する相談への基本的なスタンスや出生前検査の概要を解説します。


胎児異常とは?―まず押さえるべき基本

妊娠中に「胎児異常が心配」と相談された場合、まず以下のような認識が必要です:

  • 胎児異常は大きく**形態異常(構造的な異常)機能異常(内分泌や代謝など)**に分かれる。
  • これらは出生前または出生時に判明することが多く、両者が併存するケースもあります。
  • 一部は遺伝子や染色体異常が原因であることも。

そして、これらの異常は稀な話ではなく、新生児の約2~3%は何らかの形態異常をもって出生します。


出生前検査とは?2つの種類を理解しよう

胎児異常の診断に使われる出生前検査は、大きく分けて以下の2種類です:

種類目的特徴
非確定的検査リスク評価超音波検査、母体血清マーカー、NIPTなど安全性高いが確定診断ではない
確定的検査診断確定絨毛検査、羊水検査染色体や遺伝子の異常を直接確認、侵襲的・流産リスクあり

超音波検査は唯一、どちらにもなり得る検査ですが、検出率は異常の種類や妊娠週数、検査者の技術により大きく変動します。

たとえば:

  • 重篤な形態異常では検出感度は84%
  • 一般的な先天異常(染色体異常を除く)全体では47%(EUROCAT調査)

検査を進める際のポイント:同意とサポートがカギ

胎児異常の検査や診断が意味することは非常に重く、倫理的・心理的な配慮が不可欠です。

重要なポイント:

  • 妊婦やカップルの希望が前提(特に侵襲的検査)
  • 十分なカウンセリングインフォームドコンセントが必須
  • 絨毛検査や羊水検査は検査時期が決まっている
    • 絨毛検査:11〜14週
    • 羊水検査:15週以降
  • 検査を実施できる施設が限られている場合は適切な紹介を行う

臨床現場で求められる姿勢とは?

「この検査をすれば絶対に安心」ではないことを、医療者側がまず理解しておく必要があります。さらに、異常があった場合の家族の心理的・社会的な負担も大きく、適切な支援体制が必要です。

また、仮に検査で異常が見つかっても、その全てが胎児の生命や生活に重大な影響を及ぼすとは限らない点も丁寧に説明すべきです。


問題

妊娠14週の妊婦が「赤ちゃんに異常がないか心配」と訴えている。最も適切な対応はどれか。

A. 羊水検査をすぐに実施するよう勧める
B. 全ての胎児異常は超音波で検出可能であると説明する
C. 出生前検査には確定的検査と非確定的検査があることを説明する
D. 妊婦の希望にかかわらず遺伝学的検査を推奨する
E. 超音波検査は機能異常の診断に特化していると説明する


正解:C

解説:

  • A:羊水検査は妊娠15週以降が基本。今は時期尚早。
  • B:誤り。超音波で全ての胎児異常がわかるわけではない。
  • C:正しい。検査の種類と目的を丁寧に説明することがカウンセリングの基本。
  • D:誤り。妊婦の意思とインフォームドコンセントが最重要。
  • E:誤り。超音波は主に形態異常の評価に用いられる。

まとめ

CQ106-1では、胎児異常に対する基本的理解と出生前検査の概要、そして倫理的・心理的配慮の必要性が強調されています。検査の可否や選択は、**「妊婦の自己決定権を尊重し、医療者は支える立場に徹する」**ことが基本です。

【楽天市場】産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023 杏林舎 ボールペン付き 日本産科婦人科学会:エッセンシャルショップ
産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023 杏林舎 ボールペン付き 日本産科婦人科学会

コメント

タイトルとURLをコピーしました