はじめに
胎児発育不全(FGR: Fetal Growth Restriction)は、周産期の予後に大きく影響を与える重要な病態です。FGRに対する適切なスクリーニングと早期発見は、赤ちゃんの健康だけでなく、母体の管理方針にも大きく関わります。
しかし、教科書やガイドラインを読むと、
「出生体重と胎児体重って何が違うの?」
「SDとかパーセンタイルって具体的にどう使うの?」
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、産婦人科診療ガイドラインをベースに、FGRのスクリーニングについて解説します。
胎児発育不全(FGR)とは?
**Fetal Growth Restriction(FGR)**とは、妊娠週数に比して胎児の成長が明らかに遅れている状態を指します。これは、ただ小さい(SGA: small for gestational age)というだけではなく、本来あるべき成長が妨げられている病的状態と考える必要があります。
スクリーニングの基本方針(CQより要点まとめ)
- 子宮底長の測定:
妊婦健診ごとに子宮底長を測定し、基準よりも低値ならFGRを疑います(推奨B)。
→ ただし、肥満や多胎妊娠などでは評価が難しい場合あり。 - 妊娠中期以降は超音波で評価:
全妊婦に対して、妊娠30週ごろまでに超音波検査による胎児計測を実施(推奨B)。必要に応じて再検査を行います。
→ 頻回の超音波検査と予後改善の因果関係は不明ですが、早期発見には有効。 - 週数の再確認:
FGRを疑った場合は、妊娠初期のデータをもとに分娩予定日が正確かを再確認します(推奨B)。 - FGRの診断基準:
- 胎児体重が基準値の-1.5 SD以下を目安とする(推奨C)。
- 胎児腹囲、羊水量、経時的な変化なども総合的に評価。
- リスク因子の評価と対応:
喫煙・飲酒などの修正可能なリスク因子は除去し、より慎重な観察が必要(推奨C)。
補足知識:出生体重との違い
- **出生体重のLGA(light for gestational age)**は10パーセンタイル未満が基準。
- ただし、出生体重と胎児体重では基準や誤差が異なるため、同じ基準では判断できません。
よくある誤解
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 胎児体重が小さいだけでFGRと診断できる? | いいえ。経過や他の所見も含めて総合判断が必要です。 |
| 毎回超音波すれば子宮底長は不要? | 原則はそうですが、すべての施設で可能とは限りません。 |
| 超音波はどれくらい正確? | 誤差は15~18%程度あるため、再検査が大切です。 |
問題
35歳の妊婦。妊娠29週。特に自覚症状はないが、健診で子宮底長が基準より小さく、FGRを疑われた。今後の対応として適切でないものはどれか。
A. 妊娠初期の超音波所見を確認し分娩予定日を再確認する
B. 胎児の推定体重が-1.5 SD以下であればFGRと診断する
C. 胎児体重の変化を追うために再検査を行う
D. 出生時体重の基準曲線を用いてFGRを診断する
E. 胎児腹囲や羊水量を加味して診断を行う
正解
D
解説
出生時体重基準ではなく、胎児体重基準値を用いてFGRは評価されます。胎児体重と出生体重では基準値や誤差の前提が異なるため、出生体重基準でFGRを診断するのは不適切です。他の選択肢はすべてガイドラインで推奨されている対応です。
まとめ:FGRのスクリーニング5か条
- 健診では子宮底長を測る
- 妊娠30週までに超音波検査を行う
- 週数が正しいか確認する
- 基準値-1.5 SD以下+所見で総合判断
- 喫煙・飲酒などのリスク因子は排除!
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