CQ505:妊婦・授乳婦のう歯・歯周病ケアはどうすればいい?

産科ガイドラインを勉強する

―現場の研修医が今日から使える!マタニティ口腔ケアガイド―

妊婦健診でよくある質問のひとつ。
「先生、妊娠中に歯の治療ってして大丈夫ですか?」

このテーマは妊婦さんが不安を抱きやすいだけでなく、研修医にとっても“なんとなく分かるけど詳しく説明するのは難しい”領域です。
でも大丈夫。本記事では ガイドラインを噛み砕いて、臨床で説明できるレベルまでわかりやすく 解説します。

加えて、読者ターゲット(研修医・医学生)向けに確認問題付きです。


1.結論

妊婦・授乳婦には、歯科医師と連携しながら適切な口腔ケアを勧めることが推奨される。

ガイドラインの中では「B」ランクの推奨。
つまり、「十分に信頼できる根拠があり、推奨される」という位置づけです。


2. 妊娠中に口腔トラブルが増えやすい理由

ここを説明できると患者さんの納得度が一気に上がります。

ホルモン変化

妊娠するとエストロゲン・プロゲステロンが上昇し、歯肉の血流や炎症反応に影響します。
結果、歯肉が腫れやすく、歯周病が悪化しやすくなります。

唾液が減る

意外と知られていませんが 妊娠で唾液量が減少 します。
唾液は口腔内の“自浄作用”を担っているため、減れば虫歯のリスクが上がります。

つわりで歯磨きしにくい

吐き気でブラッシングが困難になり、ケアの質が低下します。
「歯磨き粉の匂いがダメ」という患者も多く、結果としてプラークが増えがち。

これらが合わさり、妊娠中は歯周病・う歯が進行しやすい 状態になります。


3. 歯周病が妊娠に与える影響

歯周病は早産と関連する?

多くの研究で 歯周病と早産・低出生体重・妊娠高血圧症候群などとの関連 が報告されています。
ただし、因果関係が完全に証明されているわけではなく、
“リスク因子の一つとして疑われる” 程度の理解が適切です。

う歯は早産のリスク?

有意なリスク因子ではない とする報告も。

歯周病は妊娠トラブルとの関連が示されているが、虫歯はそこまで強くないというニュアンス。


4. 妊婦健診でできるアドバイス

歯科受診は妊娠中もOK

これを知らない患者は多いです。
「麻酔は?レントゲンは?薬は?」と聞かれることもありますが、一般的に以下の通り。

  • 妊娠中の歯科治療は 安全性が確立
  • 局所麻酔薬は通常量なら安全
  • レントゲンも腹部防護すれば問題なし
  • 抗生剤はβラクタム系が基本
  • 鎮痛薬はアセトアミノフェン中心
  • 妊娠後期は仰臥位低血圧症候群に注意する

妊娠を理由に治療を延期する必要はないというのがガイドラインの立場。

治療を遅らせる方がむしろ炎症が悪化し、その結果“全身への悪影響”につながる可能性があります。

ブラッシングの工夫

  • 臭いの少ないジェルタイプの歯磨き粉
  • つわりが強い時はうがい中心でもOK
  • 食後のキシリトールガムも補助として有用
  • 歯ブラシは小さめのヘッドが楽

専門ケア(プロフェッショナルケア)

歯科医師・歯科衛生士による以下のケアも推奨されます。

  • プラーク除去
  • 歯石除去
  • ブラッシング指導
  • 口腔衛生管理

これらは 妊娠中も安全 で、口腔環境の改善に役立ちます。


5. 授乳期はどうか?

授乳中の口腔ケアもとても重要です。

新生児の口腔は最初は無菌

しかしその後…

母親の口腔内細菌が赤ちゃんへ伝播する

そのため、母親の口腔環境が悪いと赤ちゃんのう歯リスクが上昇 します。つまり、

授乳期も母親の口腔ケアを続けることは、実は“赤ちゃんの虫歯予防”にもなる。

ここは患者満足度の高い説明ポイント。


6. 実際にどう説明する?(よく使うトーク例)

研修医が外来でそのまま使えるフレーズを紹介します。


妊婦さん向け

「妊娠中は歯ぐきが腫れやすく、虫歯や歯周病が進みやすい時期です。
放っておくと早産などのリスクが上がる可能性もあるため、今のうちに歯科の先生にも診てもらいましょう。」


授乳婦さん向け

「赤ちゃんのお口は生まれた瞬間は無菌ですが、母親の口の細菌が映ることで虫歯菌がつきはじめます。お母さんのお口をきれいにしておくことが、赤ちゃんの虫歯予防にもつながります。」


7. 問題

【問題1】

妊娠中の歯周病に関する説明で正しいものはどれか?**

A. 妊娠中は歯科治療は原則禁忌である
B. 歯周病は妊娠高血圧腎症との関連が示唆されている
C. 妊娠中の歯科レントゲンはすべて禁忌である
D. 歯周病治療は妊娠に関する合併症リスクを確実に改善する

正解:B

解説
A:誤り。歯科治療は妊娠中も安全。
C:誤り。腹部防護すれば撮影可能。
D:誤り。改善効果は期待できるものの“確実”ではない。
Bが正しい。


【問題2】

授乳婦の口腔ケアが推奨される主な理由はどれか?**

A. 母乳中のカルシウムが減るため
B. 母親の口腔内細菌が児へ伝播するため
C. 授乳中は虫歯の治療が禁忌のため
D. 授乳により唾液が完全に止まるため

正解:B

解説
授乳期も母親の口腔細菌が児へ移り、それがう歯リスクになるためケアが重要。


【問題3】

次のうち、妊娠中でも通常量で使用可能な薬剤はどれか?**

A. テトラサイクリン
B. アセトアミノフェン
C. ワルファリン
D. NSAIDs(妊娠後期)

正解:B

解説
アセトアミノフェンは第一選択。
テトラサイクリンは禁忌、NSAIDs後期禁忌、ワルファリンも禁忌。


8. まとめ

妊婦・授乳婦に対する口腔ケアは、実は「産科医」「歯科医」「小児科医」すべての領域をまたぐ大事なテーマ。

本記事のポイントをまとめると:


妊娠中は虫歯・歯周病が進行しやすい

ホルモン変化、唾液減少、つわりでケア低下。

歯周病は早産・妊娠高血圧腎症などと関連

う歯よりも歯周病の方が問題になりやすい。

妊娠中・授乳中も歯科治療は安全

「妊娠だから治療できない」は誤解。

授乳婦の口腔ケアは児の虫歯予防にもなる

母親の細菌が児に伝播するため。

口腔ケアはセルフケア+専門ケアの両方が大切

歯磨き習慣、禁煙、歯科受診をセットで勧める。

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