CQ407:羊水混濁の対応|産婦人科ガイドライン解説【医学生・研修医必見】

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はじめに

羊水混濁(meconium-stained amniotic fluid)は、産科現場で比較的よく遭遇する所見です。分娩経過や胎児の状態評価、新生児蘇生の方針決定に直結するため、対応を誤ると児の予後に影響する可能性があります。
本記事では、産婦人科診療ガイドライン2023 CQ407をもとに、羊水混濁の病態・評価・分娩中と出生後の対応を整理します。さらに、国家試験レベルの練習問題とまとめで知識の定着を図ります。


羊水混濁とは

羊水混濁は、胎児の腸管内容物である胎便が羊水に混ざることで生じます。胎便は粘稠で緑色を呈し、羊水の色を淡緑〜濃緑色に変化させます。
発生頻度は妊娠週数や分娩進行度によって異なります。

  • 陣痛開始前:およそ 2〜3%
  • 陣痛開始後:20%以上
  • 妊娠満期(37〜41週):7〜22%
  • 過期妊娠(42週以降):40%に上昇

発生機序と考え方の変遷

従来は「胎児低酸素 → 腸蠕動亢進 → 胎便排泄」という因果関係が信じられてきました。
しかし最近の研究では、低酸素やアシドーシスが必ずしも原因ではないことが示されています。胎児心拍数波形が正常な場合、血液pHや酸塩基平衡に差はほとんど認められません。
とはいえ、羊水混濁+心拍異常が同時に存在する場合は、アシドーシスや新生児蘇生必要例が増えるため、注意が必要です。


臨床的意義

羊水混濁自体は必ずしも胎児仮死を意味しませんが、濃い混濁や塊状胎便は児の予後不良と関連します。特に重要なのが胎便吸引症候群(MAS)で、出生直後に呼吸障害や低酸素血症を来し、重症例では死亡例もあります。


分娩時の対応

羊水の確認

破水後は羊水の色・混濁度を観察・記録する。淡緑色や濃緑色、固形物混入などを明確に記載。

モニタリング

羊水混濁があれば分娩監視装置を20分以上装着し、胎児心拍数波形を評価。

  • 心拍正常 → 経過観察
  • 心拍異常(遅発一過性徐脈、著明な基線細変動低下など) → 急速遂娩や帝王切開を検討

抗菌薬

Cochraneレビューでは、混濁例への母体抗菌薬投与は絨毛膜羊膜炎の発生を減らす可能性がありますが、新生児敗血症や長期予後には影響しません。全例投与ではなく、リスク評価に基づく選択が必要です。


出生後の対応

MAS予防の新しい考え方

以前は「混濁羊水+活気のない児」には出生直後の口腔・咽頭吸引をルーチンで実施していました。
しかし現在は、MAS予防効果がなく、むしろ循環・呼吸合併症を増やす可能性があるため、ルーチン吸引は推奨されません

日本版新生児蘇生法2020では:

  • 胎便性羊水混濁+活気のない児 → 吸引せず、必要ならガーゼで拭う
  • 状況に応じて、熟練者による気管挿管下吸引は選択可

観察項目

  • 呼吸様式と努力呼吸の有無
  • チアノーゼやSpO₂低下
  • 呼吸音(粗大ラ音など)

問題

妊娠40週、初産婦。分娩第1期後半に破水し、濃緑色の羊水混濁を認めた。胎児心拍は基線変動正常、遅発一過性徐脈なし。この時の対応として正しいのはどれか。1つ選べ。

A. 直ちに帝王切開を行う
B. 抗菌薬を全例に投与する
C. 分娩監視装置で20分以上胎児心拍数を記録する
D. 新生児出生直後にルーチンで口腔・咽頭吸引を行う
E. 胎児心拍異常がなければ羊水混濁は放置してよい


正解

C

解説

羊水混濁があれば、まず胎児健常性の評価が最優先です。CQ407では、分娩監視装置を一定時間(20分以上)装着して心拍パターンを観察することを推奨しています。心拍異常がなければ急速遂娩は不要。抗菌薬は感染リスク軽減には役立ちますが全例投与ではない。ルーチン吸引はMAS予防にならず推奨されません。放置は論外です。


まとめ

  • 羊水混濁は妊娠満期以降や過期妊娠で多く、MASや感染リスクと関連する
  • 破水後は必ず羊水の色・性状を観察し、記録する
  • 混濁例では分娩監視20分以上で胎児心拍を評価
  • 心拍異常があれば急速遂娩を検討
  • 母体抗菌薬投与は感染予防に有効だが、新生児予後改善効果は不明
  • 出生後のルーチン吸引は推奨されず、呼吸状態に応じた対応が必要

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