はじめに
妊娠中に「子宮筋腫」が見つかるのは珍しいことではありません。近年、妊娠年齢の上昇により子宮筋腫合併妊娠は増加傾向にあります。
では、「妊婦に子宮筋腫を認めたときにどのように対応すべきか?」
これが日本産科婦人科学会のガイドライン CQ501 で取り上げられている重要なテーマです。
本記事ではガイドラインの要点を整理しつつ、臨床現場での考え方、そして試験に出やすいポイントまでまとめます。
子宮筋腫とは?
子宮筋腫は女性に最もよくみられる良性腫瘍です。エストロゲン依存性に発育し、妊娠中に大きさが変化することもあります。
妊婦の約1割に見られるとされ、妊娠管理においてしばしば問題となります。
妊婦に子宮筋腫を認めた場合の基本的対応
1. 位置・サイズ・胎盤との関係を評価する
- 超音波やMRIで筋腫の場所、大きさ、個数、胎盤との距離を確認する。
- 胎盤に近い位置の筋腫はリスクが高い。
2. 妊娠・分娩異常に注意する
筋腫があると、以下の異常のリスクが上がることが知られています:
- 早産
- 前置胎盤
- 常位胎盤早期剝離
- 胎位異常(骨盤位など)
- 陣痛異常
- 帝王切開率上昇
- 分娩後出血
メタ解析では、帝王切開率が約3〜4倍に増えると報告されています。
3. 筋腫関連の疼痛(筋腫変性)
- 妊娠中期に「筋腫の変性」による強い下腹部痛を訴えることがある。
- 多くはアセトアミノフェンで対処可能だが、時にオピオイドが必要。
- 改善しない場合は感染(pyomyoma)を疑う。
4. 妊娠中・帝王切開時の筋腫核出術
- 原則として推奨されない(出血・流産リスク)。
- ただし以下のような例外あり:
- 激烈な疼痛で保存的治療が無効
- 急激な増大により周囲臓器を圧迫し妊娠継続困難
- 帝王切開時の筋腫核出は議論があり、施設や術者の経験によって対応が異なる。
5. 産褥期の注意点
- 出血、感染、筋腫変性のリスクあり。
- pyomyoma(筋腫核への感染)は重症化しやすく、外科的治療を要することがある。
- 退院時に「産褥期も合併症が起こり得る」と説明しておくことが重要。
臨床の現場でのポイント
- 「妊婦健診のエコーで筋腫が見つかった」ときはサイズ測定と胎盤との位置関係を必ず記録。
- 筋腫が大きい妊婦では分娩計画を早めに検討する。
- 痛みの訴えが強い場合、「筋腫変性なのか」「感染を伴っていないか」を見極める。
- 「帝王切開時に核出するかどうか」は施設・術者によって判断が分かれるため、エビデンスと経験の両面を踏まえて検討する。
試験によく出るポイント
- 妊娠中の筋腫核出術は原則行わない
- 帝王切開時の筋腫核出も原則推奨されないが、例外あり
- 筋腫合併妊娠は「早産・前置胎盤・常位胎盤早期剝離・胎位異常・分娩後出血」に注意
問題
妊娠20週の初産婦。強い下腹部痛を訴えて救急外来を受診した。超音波検査で子宮前壁に径7cmの筋腫を認める。胎児心拍は正常。最も考えられる病態はどれか。
A. 子宮破裂
B. 筋腫変性
C. 子宮内感染
D. 常位胎盤早期剝離
E. 卵巣茎捻転
正解
B. 筋腫変性
解説
妊娠中期に見られる「強い局所痛」の代表が筋腫変性です。胎児心拍は保たれており、子宮破裂や胎盤早期剝離の所見はない。臨床的に頻出の鑑別です。
まとめ
- 妊婦に子宮筋腫を認めた場合、まず位置・大きさ・胎盤との関係を評価する。
- 妊娠・分娩異常のリスクが上がるため、周産期管理を慎重に行う。
- 妊娠中の筋腫核出術は基本的に避ける。
- 筋腫変性による疼痛は臨床でよく遭遇し、国試でも頻出。
- 産褥期も出血・感染リスクを念頭に置くことが重要。


コメント