CQ004-3:妊娠中・産褥期にDVTやPTEが疑われたら?初期対応と診断の流れを解説

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はじめに

妊娠中や産褥期は血栓症のリスクが高い時期です。中でも注意すべきなのが、深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PTE)。これらは迅速な診断と対応が求められる重大な合併症です。

この記事では、日本産科婦人科学会のCQ004-3に基づき、DVTやPTEが疑われる妊産婦に対する適切な初期対応や検査の進め方を整理して解説します。

まず何を優先すべきか?

心停止・ショックを疑う場合は「治療が優先」

  • DVTやPTEの診断よりも、呼吸・循環の初期対応を優先します。
  • 妊婦の**心肺停止に対しては救命処置(CPR)**をただちに行い、母体救命を最優先に。

PTE・DVTを疑う症状や検査の進め方

1. 観察と基本的な診察

  • バイタルサイン測定(血圧、脈拍、呼吸数、SpO₂)
  • 視診・触診(Homans徴候、Loewenbergテストなど)
  • 片側性の下肢腫脹や疼痛、色調変化に注目
  • DVTは左下肢に多いのが特徴です

2. 検査の優先順位

疑われる疾患推奨される検査
DVT下肢静脈エコー(第1選択)
PTE心電図、胸部X線、動脈血ガス、心エコー、造影CT(必要時)

Dダイマーは妊婦では自然に高値になることがあり、診断の信頼性は低い点に注意が必要です。


高次施設への紹介も視野に

  • 自施設での対応が困難な場合、またはPTEが強く疑われる場合は、循環器内科・外科や救命救急部門への紹介を速やかに行いましょう。

診断が確定していなくても治療開始を検討

  • PTEが強く疑われる場合抗凝固療法(未分画ヘパリン)を可能な範囲で速やかに開始
  • 診断が未確定でも、重症化を防ぐために「疑診」段階で治療に入るのが原則です。

問題


妊婦において、肺血栓塞栓症(PTE)が強く疑われる状況での対応として適切なものを1つ選べ。

A. Dダイマー値が正常であればPTEは否定できる
B. 診断が確定するまでは抗凝固療法は開始しない
C. 妊娠中は造影CTは禁忌であり施行しない
D. PTEが強く疑われる場合は、診断前でもヘパリン投与を考慮する
E. SpO₂が正常であればPTEの可能性は低いと判断できる

正解

D. PTEが強く疑われる場合は、診断前でもヘパリン投与を考慮する

解説


PTEは発症初期の死亡リスクが高く、確定診断を待っていては手遅れになる可能性があります。抗凝固療法(未分画ヘパリン)は、診断が未確定でも、疑診の段階で開始することが望ましいとされており、これは日本産科婦人科学会のガイドラインでも明記されています。

まとめ

  • 心停止・ショックがあるときはまず救命処置
  • 診断は臨床所見+画像検査が鍵(特に超音波、造影CT)
  • DVTがあれば常にPTEの併発を疑う
  • 抗凝固療法はなるべく早期に開始
  • 自施設で対応困難ならすぐに専門施設へ連携を

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