CQ303:前期破水の取り扱いとは?|現場で役立つ実践ポイント

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はじめに:前期破水とは?

**前期破水(PROM: Premature Rupture of Membranes)**とは、陣痛開始前に卵膜が破れることを指します。妊娠週数や感染の有無によって母児の管理が大きく変わるため、現場での迅速・的確な判断が求められます。


基本のステップ:まず何を確認する?

  1. 絨毛膜羊膜炎の有無を評価する
     → 発熱、子宮圧痛、悪臭のある帯下、白血球増多などに注目。Lenckiの基準が目安。
  2. 胎児の状態を評価する(26週以降ならNST)
  3. 妊娠週数を確認し、対応施設の可否を判断する

妊娠週数ごとの対応まとめ

妊娠週数主な対応
37週以降分娩誘発 or 陣痛待機(どちらでも可だが感染リスク考慮)
34〜36週原則は分娩誘発。ただし施設やGBS陽性の有無により調整
24〜33週感染兆候がなければ抗菌薬を使って待機管理。ベタメタゾンも投与
22〜23週小児科・施設能力を考慮し個別に対応。ベタメタゾンやMgSO₄も検討
24週未満小児科医と協議し、個別に治療方針を決定

特に重要な管理ポイント

臨床的絨毛膜羊膜炎を疑うときのサイン

  • 母体発熱(≧38℃)
  • 子宮圧痛
  • 母体頻脈(≧100/分)
  • 羊水の悪臭
  • WBC≧15,000/μL

上記のうち、発熱+1項目以上で診断(Lenckiの基準)

抗菌薬の使用

  • 妊娠37週未満では抗菌薬を投与
  • GBS陽性ならGBSカバー抗菌薬

ステロイド(ベタメタゾン)

  • 妊娠24〜34週未満:1週間以内に早産が予測されるなら2回筋注
  • 22週以降24週未満:慎重に検討(効果ありとの報告あり)

MgSO₄の使用

  • 妊娠32週未満:児の脳保護のために使用(WHO推奨)

管理のまとめ図(早見表)

項目ありなし
臨床的絨毛膜羊膜炎分娩誘発 or 帝王切開待機管理可
胎児well-being喪失迅速に娩出継続評価
妊娠34週未満NICU搬送 or 連携対応施設で管理
発熱あり胎児心拍監視強化通常管理

問題

妊娠32週の妊婦が前期破水のため受診した。腟鏡診で羊水流出を確認し、母体体温37.2℃、WBC 11,000/μL、CRP 0.8 mg/dLで、胎児心拍正常。NSTで変動一過性加速を認めた。今後の対応として適切なのはどれか。

A. 帝王切開
B. 分娩誘発
C. 抗菌薬を投与し待機
D. 子宮収縮抑制薬を長期間使用
E. 子宮内感染を疑い内診を行う


正解

C. 抗菌薬を投与し待機

解説

  • 妊娠32週で、臨床的絨毛膜羊膜炎なし、胎児のwell-being良好な前期破水。
  • 24〜34週のPROMでは抗菌薬投与下での待機管理が原則
  • 内診は感染リスクを上げるため、腟鏡診が基本。
  • 子宮収縮抑制薬は短期なら考慮されるが、長期投与はリスクあり。
  • 分娩誘発や帝王切開の適応ではない。

まとめ

前期破水の管理は「週数」と「感染兆候」の有無をしっかり見極め、施設の体制と小児科との連携がカギです。特に国家試験や現場では、Lenckiの基準・ステロイド・抗菌薬・MgSO₄の適応を押さえておくことが大切です。

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発行:日本産科婦人科学会 編集・監修:日本産科婦人科学会

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