はじめに:今年のクリスマス映画、これにしない?
年末年始の映画といえば、あなたは何を思い浮かべますか?
『ホーム・アローン』や『ラブ・アクチュアリー』など、定番はたくさんありますが、私が今年心を動かされたのは、2018年アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』。
この映画、ただの「人種差別を描いた感動作品」と思って見ると、良い意味で裏切られます。笑いもあり、胸に刺さるセリフもあり、ラストには不意打ちのように涙がこぼれる。そして、観終わった後に誰かと語り合いたくなるような映画です。
あらすじ:南部を旅する、真逆なふたり
物語の舞台は1962年のアメリカ。
人種差別が色濃く残る南部を、黒人の天才ピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリーと、イタリア系白人で元ナイトクラブの用心棒、トニー・“リップ”・バレロンガが一緒に旅をします。
ドクは演奏ツアーのために、トニーを運転手兼ボディーガードとして雇います。そして旅の途中でふたりは、黒人専用の施設を案内する『グリーンブック』というガイドブックを手に、南部を巡ることになります。
最初は反発し合う2人。しかし旅が進むにつれて、お互いに心を開き、理解し合い、支え合っていく姿が、観る人の胸を打ちます。
グリーンブックとは?──知られざる“差別の地図帳”
映画のタイトルにもなっている「グリーンブック」は実在します。
1936年から1966年まで発行されていたこの本には、黒人が泊まれるホテル、食事できるレストラン、利用可能な施設が記載されていました。
人種隔離が合法だった時代、黒人がアメリカを安全に旅するための“命綱”のようなガイドブック。それが『グリーンブック』だったのです。
この映画は、その現実を背景に、「人間同士の絆は、国境も人種も超えることができる」と強く訴えかけてきます。
映画の魅力:笑いと涙の絶妙なバランス
個人的に、「お涙ちょうだい」な映画はあまり好きではありません。
しかしこの『グリーンブック』には、無理に泣かせにくる演出が一切ない。
それでも最後には、じんわりと涙がこぼれるんです。
伏線の巧妙さに唸る
冒頭で描かれるトニーのホットドッグ早食いシーンは、ただのコミカルな描写かと思いきや、
後に手紙を書くシーンや質屋のシーンにつながる伏線となっていて、人物描写の深さを感じます。
手紙に宿る“変化”
トニーは、旅の途中で妻・ドロレスに手紙を書きます。文才がなく、苦戦する彼にドクが書き方を教え、言葉に気持ちを込めるようになります。
言葉の変化が、トニーの内面の変化そのものなんです。
最後の一言が心を打つ
旅を終え、クリスマスパーティーをしている家族のもとに帰ったトニー。そこに現れたドクを迎えるドロレスのセリフは、短くて温かくて、笑えて、そして泣ける。
それまでの旅の記憶が一気によみがえり、涙腺が決壊します。
実話ベースのストーリー──脚色は“嘘”ではない
この映画は実話をベースにしていますが、史実そのままではありません。
脚色があるからこそ、ドラマ性が生まれ、観客の心に残る。
史実通りじゃなくてもいい。むしろ、脚色を通して伝わる“本質”こそが、映画の力なのだと再確認させてくれる作品です。
まとめ:クリスマスに観たくなる、温かな映画
『グリーンブック』は、ただの社会派映画でも、ただの友情物語でもありません。
人間らしさ、優しさ、ユーモア、変化、尊重──すべてが詰まった、心温まる1本です。
今までクリスマス映画といえば『ホーム・アローン』一択だった私ですが、今年からは『グリーンブック』もそのリストに加わりました。
「今年は何観ようかな…」という方、ぜひ一度観てみてください。
終わったあとに、大切な誰かと話したくなる映画です。
作品情報
- タイトル:グリーンブック(Green Book)
- 公開年:2018年
- 監督:ピーター・ファレリー
- 出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ
- ジャンル:伝記 / ヒューマンドラマ / ロードムービー
- 受賞:第91回アカデミー賞 作品賞・脚本賞・助演男優賞

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