CQ410:分娩中の胎児心拍数および陣痛の観察 ~胎児の安全を守るための基本的なモニタリング~

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はじめに

分娩は母体だけでなく胎児にとっても大きな負担となるため、胎児の健康状態をリアルタイムに把握することが重要です。胎児心拍数(FHR)と陣痛のモニタリングは、胎児の状態を間接的に示す重要な指標として世界中で行われています。しかし、モニタリングの方法や間隔、波形の判読には専門知識が必要で、誤った解釈が不要な医療介入を招くこともあります。

このブログでは、日本産科婦人科学会のCQ410をベースに、分娩中の胎児心拍数と陣痛の観察のポイントをわかりやすく解説します。


胎児心拍数と陣痛のモニタリングは誰が行う?

胎児の健康を守るための心拍数や陣痛の評価は、訓練を受けた医師や助産師が中心となって実施します。看護師も医師の指導のもと評価を行うことがあります。判読には専門的なトレーニングが欠かせず、正しい解釈が安全管理の鍵です。

胎児心拍数は、分娩監視装置(CTG)を用いて記録されます。記録速度は「3cm/分」が標準的で、これにより微妙な心拍の変動や陣痛との関係を正確に見ることが可能です。


分娩中のモニタリング方法と実施の目安

分娩第1期の観察

第1期は子宮口が開いていく過程で、胎児の負担はまだ比較的軽い時期です。入院時には最低20分間、連続して胎児心拍数と陣痛をモニタリングし、その後異常がなければ間欠的に心拍数を聴取する方法がとられます。間欠的聴取の間隔は15分から90分まで幅がありますが、施設ごとに管理マニュアルを設定し、産婦にも説明して理解を得ることが望ましいです。

分娩第2期の観察

第2期は児が産道を通過する重要な時期です。この時期は臍帯の圧迫や急激な変化が起こりやすいため、全ての産婦に対して連続的な胎児心拍数モニタリングが推奨されます。

リスクがある場合の連続モニタリング

胎児や母体の状態によりリスクが高いと判断される場合は、常に連続モニタリングが必要です。例えば:

  • 子宮収縮促進剤や子宮頸管熟化剤(プロスタグランジンE2腟用剤)を使用中
  • 無痛分娩(硬膜外麻酔)中
  • 高熱(38℃以上)や感染が疑われる状態
  • メトロイリンテルの使用(特に41mL以上の場合)
  • 糖尿病合併妊娠や妊娠高血圧症候群、多胎妊娠、胎児発育遅延などのハイリスク妊娠
  • 破水や羊水混濁、血性羊水が認められた場合

これらは胎児の酸素不足リスクが高いため、より厳密な観察が必要です。


胎児心拍数波形の読み方のポイント

胎児心拍数の波形は大きく分けて、基線心拍数、細変動(心拍の小さな揺らぎ)、徐脈や頻脈、そして陣痛に伴う一過性の変動(早発・遅発減少や変動一過性徐脈)で構成されます。

この波形のパターンに応じて、医療スタッフは胎児の状態を3段階に分類します。

  1. 正常(レベル1)
    問題がなく経過観察が可能。間欠的に心拍数を聴取しながら経過を追う。
  2. 注意(レベル2)
    何らかの異常が疑われ、監視を強化したり保存的処置を行う必要がある。連続モニタリングを行う。
  3. 異常(レベル3)
    速やかな分娩進行や緊急分娩の検討が必要。連続モニタリングのもと迅速に対応。

モニタリングの判読は経験に左右されやすいため、定期的なトレーニングや施設内での統一基準の作成が求められます。


モニタリングの効果と現実的課題

多くの研究やメタ解析では、心拍数モニタリングは間欠的聴取に比べ周産期死亡率を減らす明確な証拠はありません。ただし、新生児けいれんの発生率低下などの効果は一部示されています。

一方で、モニタリングによる医療介入(帝王切開や器械分娩の増加)がみられ、患者への負担や産婦の動きの制限といったデメリットも存在します。

そのため、リスクが低い産婦に対しては適切な間欠的聴取を取り入れつつ、リスクが高い産婦には連続モニタリングを行うというバランスの良い方法が現在の推奨となっています。

問題

分娩中の胎児心拍数モニタリングに関して、正しいものをすべて選べ。

A. 分娩第1期で正常な波形なら、間欠的児心拍聴取は最大6時間まで許容される。
B. 分娩第2期は間欠的児心拍聴取で十分であり、連続モニタリングは不要である。
C. 子宮収縮促進剤使用中の産婦には連続モニタリングが推奨される。
D. 胎児心拍数陣痛図の記録速度は1cm/分が標準である。
E. 羊水混濁があれば一定時間の連続モニタリングが必要である。


正解

A, C, E


解説

  • A:分娩第1期で異常所見がなく正常であれば、間欠的聴取に切り替え、最大6時間までの間隔も認められている(推奨度B)。
  • B:分娩第2期は胎児にとって非常に負荷の高い時期であり、連続的なモニタリングが推奨されるため誤り(推奨度B)。
  • C:子宮収縮促進剤(オキシトシンなど)使用中は胎児の状態を連続して監視する必要がある(推奨度A)。
  • D:記録速度は3cm/分が推奨されており、1cm/分では波形の細かい変化を正確に読み取りにくいため誤り(推奨度B)。
  • E:羊水混濁は臍帯圧迫など胎児へのリスクがあるため、一定時間の連続モニタリングが必要(推奨度B)。

まとめ

  • 分娩中の胎児心拍数と陣痛の観察は胎児の安全を守るための重要な手段であり、専門的な訓練を受けたスタッフが実施する。
  • 記録は3cm/分で行い、波形のパターンに応じて正常・注意・異常の3段階に分類し、それぞれに応じた対応を行う。
  • 分娩第1期は異常なければ一定時間の連続モニタリング後、間欠的聴取に移行可能。分娩第2期は基本的に連続モニタリングを行う。
  • 子宮収縮促進剤使用中やハイリスク妊娠などでは常に連続モニタリングが推奨される。
  • 心拍数モニタリングは周産期死亡率の減少を示す明確なエビデンスは乏しいが、早期発見と対応のために重要視されている。

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