CQ307-2:胎児発育不全(FGR)にどう対応する?管理と分娩の判断ポイントをガイドラインから解説

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はじめに

胎児発育不全(FGR: fetal growth restriction)は、予後不良に直結する重要な病態であり、単なる「小さめの赤ちゃん」とは異なります。
スクリーニングでFGRが疑われた場合、その後の適切な取り扱い(精査・管理・分娩方法)が胎児の命を守るカギとなります。

この記事では、ガイドラインをもとに、FGRの取り扱い(=診断後の評価と管理)についてわかりやすく解説します。


FGRの原因検索

FGRが見つかったら、まず原因の検索を行います。
原因は大きく3つに分かれます:

母体因子

  • 高血圧、腎疾患、自己免疫疾患(SLE、抗リン脂質抗体症候群など)
  • 喫煙、栄養不良、体格(低身長・低体重)

胎児因子

  • 形態異常(例:先天性心疾患)
  • 胎児感染症(例:TORCH症候群)
    • TORCHはルーチンで調べる必要はないが、**発熱・発疹・異常エコー(肝脾腫・中枢神経異常など)**があれば抗体検査を考慮。

胎児付属物因子

  • 胎盤異常(機能不全、梗塞など)
  • 臍帯異常(単一臍帯動脈や異常付着など)
    ※単一臍帯動脈はFGRとの関連性が低いとする報告もあり(メタ解析, 2013年)。

染色体異常の可能性評価

複数の形態異常がある、あるいは染色体異常に特徴的な所見がある場合は、染色体検査を検討します。

  • 13トリソミー、18トリソミーの約50%はFGRを呈する
  • 胎盤モザイク(胎盤のみに染色体異常)もFGRの原因として約10%

妊娠中の染色体検査の適応や方法はCQ106シリーズを参照。


胎児well-being評価と分娩時期の決定

FGRに対して経母体的治療(酸素投与・安静・栄養など)は有効性が乏しいとされており、
胎児の健康状態(well-being)を慎重にモニタリングし、最適なタイミングで娩出するのが基本方針です。

モニタリング方法

検査名内容
NST(non-stress test)胎児心拍と胎動の関係をみる
CST(contraction stress test)陣痛時の胎児心拍反応
BPS(biophysical profile scoring)胎動・呼吸様運動・筋緊張・羊水量など5項目を評価
超音波検査推定体重、羊水量、臓器の発育など
ドプラ検査**臍帯動脈血流、MCA(中大脳動脈)、静脈管(DV)**など

特に重要:臍帯動脈血流測定

  • pulsatility index(PI)上昇 → 予後不良の初期所見
  • 逆流や途絶が出る前に対応することが重要
  • ドプラ検査を週1回行うことで周産期死亡が38%減少(CI: 15〜55%)

分娩の方法と時期

分娩時期

  • 明確なガイドラインやRCTはないが、モニタリング所見や胎児体重の推移から総合的に判断
  • 「Growth Restriction Intervention Trial(GRIT)」では、30週未満ではある程度の待機が可能とされた

分娩方法

  • FGR単独では帝王切開の適応とはならない
  • 経腟分娩が可能な場合は、ハイリスク分娩として連続モニタリングを行う
  • FGR早産児に対するステロイド投与の有効性は確立していないが、考慮されることもある

問題

妊娠32週、健診で胎児発育不全(FGR)を指摘された妊婦。推定胎児体重は-2.5SDで、胎児奇形や羊水異常は認めない。管理方針として最も適切なのはどれか。

A. 入院安静と高カロリー点滴
B. TORCH抗体検査のルーチン実施
C. 毎日のNSTのみで経過観察
D. 胎児well-beingの評価を行い、分娩時期を検討
E. 即時帝王切開術

正解

 D


解説

FGRでは経母体的治療(安静・栄養)は効果がなく、胎児の健常性(well-being)の評価が重要です。
臍帯動脈ドプラ、NST、羊水量などを総合的に評価し、適切なタイミングで娩出することが予後改善につながります。

A → 治療効果なし(現在は推奨されない)
B → ルーチン検査は不要
C → NST単独では不十分
E → FGR単独では即時帝王切開の適応にはならない


まとめ

  • FGRの取り扱いでは、原因検索→染色体・感染症の評価→well-beingのモニタリング→分娩時期の決定が基本の流れ。
  • 治療ではなく「タイミングを見極めて娩出」が鍵
  • 臍帯動脈のPIの異常が早期サイン。逆流や途絶に至る前に管理を始める。
  • 分娩方法は症例ごとの判断だが、FGR単独で帝王切開にはならない。
胎児発育不全
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