はじめに
巨大児(出生体重4,000g以上)は、母体および児に様々なリスクをもたらすため、妊娠中からの予測・対応が重要です。本記事ではガイドラインの内容を噛み砕いて解説し、最後に確認問題を掲載します。
巨大児を疑うべき妊婦の特徴
以下のような妊婦は巨大児のリスクが高いため、慎重な管理が必要です。
- 糖代謝異常(妊娠糖尿病・糖尿病)
- 巨大児分娩や肩甲難産の既往歴
- **Heavy-for-dates(HFD)**と判断された症例(超音波での胎児推定体重が週数に対し大きい)
→ 特に糖代謝異常がある場合、巨大児の発生頻度が健常妊婦の4倍前後になることが報告されています。
分娩管理と予防の考え方
分娩誘発は慎重に
巨大児を予防するための分娩誘発は、リスクとベネフィットを妊婦とよく相談する必要があります。
- 肩甲難産や骨折などのリスクを減らす可能性がある反面、
- 会陰裂傷(3度・4度)の増加や、
- 新生児光線療法の増加、
- 長期発達障害の可能性(妊娠38週未満での誘発)
といった懸念もあります。
→ RCTでは、分娩誘発群で肩甲難産の頻度が有意に低下したとの報告もあるが、万人に適応できる戦略ではありません。
帝王切開のタイミング
- 非糖尿病妊婦:推定体重5,000g以上で予防的帝王切開の検討も。
- 糖尿病合併妊婦:推定体重4,500g以上で同様に検討。
肩甲難産の発生時の対応
肩甲難産が発生した場合、時間との勝負です。まずは以下の基本手技を迅速に行います。
- 人員確保・小児科医呼び出し(新生児仮死対策)
- 会陰切開(まだであれば)
- McRoberts体位
- 恥骨結合上縁部圧迫法
→ この4つの基本手技で半数以上の症例で分娩可能とされています。
それでもダメな場合は?
以下の応用手技を検討します:
- 上肢解出法(Schwartz法)
- Woodsのスクリュー法
- Rubin法
- 四つん這い分娩
- Zavanelli法(児頭を戻して帝王切開)
※それぞれ分娩損傷のリスクが高まるため、慎重な判断が必要です。
産後フォロー:糖代謝異常の再評価
妊娠中に糖負荷試験を受けていなかった、または正常だった妊婦であっても、巨大児や肩甲難産があった場合は、産後6〜12週で75g OGTTを施行すべきです。
→ 妊娠中に見逃されていた糖代謝異常が、産後に明らかになる可能性があります。
問題
肩甲難産を想定した際の初期対応として最も適切なものはどれか?
A. 子宮底圧迫を加える
B. McRoberts体位をとらせる
C. 児頭を強く牽引して娩出する
D. 待機して自然娩出を期待する
E. 帝王切開の準備を先に行う
正解
B. McRoberts体位をとらせる
解説
肩甲難産における初期対応では、児頭の牽引や子宮底圧迫は禁忌です。まず行うべきは、会陰切開・McRoberts体位・恥骨結合上縁部圧迫法といった基本手技です。帝王切開はZavanelli法の際に行われますが、初期段階ではありません。
まとめ
巨大児が疑われる場合、予測の難しさと異常分娩のリスクの高さを理解し、妊婦と適切にコミュニケーションを取りながら、柔軟かつ安全な対応が求められます。


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