CQ705:双胎妊娠の航海図 管理から分娩まで

産科ガイドラインを勉強する

はじめに:双胎管理の合言葉は「攻めの予防」と「守りの監視」

双胎妊娠は、診断がついたその日から「ハイリスク妊娠」としての航海が始まります。

ガイドラインの冒頭にある通り、早産、妊娠高血圧症候群(HDP)、胎児発育不全(FGR)など、あらゆる産科合併症のオンパレードです。

私たちが意識すべきは、「何か起きてから動く」のではなく、「起きることを前提に網を張る」ことです。


1. 妊婦健診の頻度とチェックポイント

ガイドラインでは、膜性診断に基づいた健診スケジュールを推奨しています。

膜性別の健診インターバル

  • 二絨毛膜(DC)双胎: 妊娠20週以降、4〜6週ごとの胎児発育評価。
  • 一絨毛膜(MC)双胎: 妊娠16週以降、少なくとも2週ごとの評価。
    • ※MC双胎はTTTS(双胎間輸血症候群)のリスクがあるため、より厳重な「2週間ルール」が適用されます。

合併症の「百貨店」を監視する

双胎妊娠で特に注意すべき合併症を整理しましょう。

合併症理由・背景
早産子宮の過伸展により、陣痛や破水が起きやすい。
HDP(妊娠高血圧)胎盤容量が大きく、単胎の約2.5〜3倍のリスク。
FGR / Discordanceスペースの取り合いや胎盤占有面積の差(特にMC)。
血栓塞栓症高エストロゲン、血液濃縮、安静など。
分娩後異常出血子宮の収縮不全(弛緩出血)が起きやすい。

研修医向けメモ:早産予防の「エビデンス」に注意!

双胎において「予防的入院」「予防的頸管縫縮術」「予防的黄体ホルモン投与」が早産率を下げるという明確なエビデンスはありません。

ルーチンの入院を勧めるのではなく、頸管長の短縮など個別のリスクに応じて判断することがガイドラインのスタンスです。


2. 分娩時期:いつ「出す」のがベストか?

「ふたごは37週が正期産」と聞いたことはありませんか?

実は、双胎は37週を超えると胎児健常性(well-being)が低下し、死産のリスクが単胎よりも早く上昇し始めます。

推奨される分娩時期

ガイドラインや最新のメタ解析を総合すると、以下の時期が目安となります。

  • DD双胎(二絨毛膜): 妊娠37〜38週での分娩を考慮。
  • MD双胎(一絨毛膜二羊膜): 妊娠36〜37週(遅くとも37週)。
  • MM双胎(一絨毛膜一羊膜): 妊娠32〜34週での帝王切開。

3. 分娩様式:経腟分娩 vs 帝王切開

ここが現場で最も熱く議論されるポイントです。

結論から言うと、「第一子が頭位なら経腟分娩は可能」です。

経腟分娩を選択できる条件

有名な「Twin Birth Study」という大規模なRCTにより、以下の条件を満たせば、帝王切開と経腟分娩で新生児予後に差がない(むしろ経腟が良好な場合もある)ことが示されました。

  1. 第一子が「頭位」である。
  2. 妊娠32週〜38週である。
  3. 第一子の推定体重が適正である。

第二子の胎位はどうする?

第一子が出た後、第二子が骨盤位や横位だったとしても、熟練した産科医がいれば**「外回転術」や「骨盤位牽引」**による経腟分娩が可能です。

ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 12%の確率で胎位が変わる: 第一子分娩後、広くなった子宮内で第二子が自由に動いてしまうためです。
  • 緊急帝王切開の準備: 第一子は経腟で出たのに、第二子が急変して帝王切開(combined delivery)になるリスクが数%あります。

4. 分娩中の管理:2児の心音を追い続ける

経腟分娩を選択した場合、管理の難易度は跳ね上がります。

  • 同時モニタリング: 2台の分娩監視装置(または双胎用)で、両児の心拍数を連続的に記録します。「どっちの心音か分からない!」とならないよう、超音波で確認しながら装着します。
  • 第一子分娩後の「空白の時間」: 第一子が誕生した後、すぐに第二子の胎位と心音を確認します。エコーを分娩室に常備しておくのがガイドラインの推奨です。
  • 子宮底圧迫法(クリステレル)はNG: 第一子分娩時にこれを行うと、胎盤剥離や第二子の急変を招く恐れがあるため、回避すべきとされています。

問題 医師国家試験レベル

問題1

双胎妊娠の管理と分娩について正しいのはどれか。

A. 無症状の双胎妊婦に対し、妊娠28週からのルーチン入院が推奨される。

B. 二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)では、妊娠37週での計画分娩を検討する。

C. 第一子が骨盤位であっても、初産婦なら経腟分娩を第一選択とする。

D. 第一子分娩直後に、速やかに子宮収縮薬を最大量投与する。

E. 第一子分娩後、第二子が横位であれば直ちに帝王切開に切り替える。

【正解】B

【解説】

A:予防的入院の有効性は示されていません。

B:正しい。37週以降は死産リスクが増えるため、計画的な分娩検討が望ましいです。

C:第一子が骨盤位の場合は、一般的に帝王切開が選択されます。

D:第二子がまだ子宮内にいるため、強すぎる収縮薬は胎盤剥離のリスクになります(状況によりますが「速やかに最大量」は不適切)。

E:熟練した産科医がいれば、外回転術などを試みる選択肢があります。


問題2

一絨毛膜二羊膜(MD)双胎の分娩管理において、ガイドラインで推奨されているのはどれか。

A. 妊娠16週以降、4週間隔で超音波検査を行う。

B. 第二子の心拍数モニタリングは、第一子分娩後から開始する。

C. 分娩室に超音波断層装置を準備する。

D. 第二子の娩出は、第一子娩出から30分以上経過させるのが望ましい。

E. 産後出血のリスクは単胎妊娠と変わらない。

【正解】C

【解説】

A:MC双胎は「2週間隔」が原則です。

B:両児とも、分娩開始から連続的にモニタリングする必要があります。

C:正しい。第一子分娩後の第二子の胎位確認に必須です。

D:分娩間隔をわざと空ける必要はありません。むしろ遷延するとリスクが増します。

E:子宮過伸展のため、弛緩出血のリスクは非常に高いです。


5. まとめ

最後に、ブログの総括として、実臨床で使える重要ポイントを整理します。

  1. 膜性診断を起点にする: DCは4週、MCは2週ごとのエコー!
  2. 「予防」の限界を知る: 入院やシロッカーをルーチンで行わず、所見に基づいた管理を。
  3. 分娩のタイミング: 37週(MCは36週〜)を目安に、お産の方針を固める。
  4. 経腟分娩の条件: 「第一子が頭位」が絶対条件。第二子の胎位変化に備え、エコーを手元に置く。
  5. 弛緩出血への備え: 出産後は子宮が伸びきっています。ルート確保や収縮薬の準備を万全に。

双胎妊娠の管理は、産婦人科の面白さと難しさが凝縮されています。目の前の妊婦さんと赤ちゃんの「well-being」を常に問い続ける姿勢が大切です。

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