CQ104-1:妊婦に薬を使ったけど大丈夫?と聞かれたらどう答える?

産科ガイドラインを勉強する

妊娠と薬、正しく怖がり、正しく説明するために

はじめに

「妊娠中に薬を飲んでしまったけど、大丈夫でしょうか?」
産婦人科、内科、小児科…どの科にいても、妊婦さんからこの質問を受けたことがある先生は多いのではないでしょうか。

このCQ104-1では、妊娠中の薬剤使用と胎児への影響について、どのように考え、どう伝えるべきかを解説しています。


ポイントは5つ!

① 胎児への影響は“妊娠時期”により異なる

妊娠何週のどのタイミングで薬を使ったかが、まず最重要です。
時期によって影響のリスクも異なります。

時期別の大まかなリスク

妊娠週数胎児への影響
受精〜妊娠3週末基本的に催奇形性はない。ただし一部薬剤に注意。
妊娠4〜7週末器官形成期。催奇形性のリスクが最も高い時期。
妊娠8〜12週末小奇形のリスクあり。口蓋裂や性器の形成に注意。
妊娠13週〜分娩形態異常は稀だが、胎児毒性(機能的障害)の可能性あり。

② リスクの「大きさ」はどう説明する?

「2〜3%」という数字を覚えておきましょう。
これは先天異常の自然発生率で、薬剤を使わなくてもこれくらいの頻度で生じます。
薬剤使用によりこのリスクがどれくらい上がるのかを比較して説明することが重要です。


③ 有害性だけじゃない。薬の必要性・有益性も含めて伝える

薬を使わないことで母体に悪影響が出れば、結局胎児にも悪影響となります。
「薬の害」だけでなく、「薬を使うことの意味」も説明しましょう。

例)
抗けいれん薬の中止 → けいれん再発 → 胎児にも低酸素のリスク
抗うつ薬の急な中止 → 再発 → 妊婦のQOL低下 → 育児不安や不適切な養育リスク


④ 情報源はアップデートを

薬の安全性に関する情報は日々更新されています。
添付文書や、以下のような信頼できる情報源を活用しましょう。

  • 『妊娠と授乳 薬物治療コンサルテーション』(じほう社)
  • 『Drugs in Pregnancy and Lactation』(専門書)
  • 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
  • OTIS(米国)・ENTIS(欧州)などの情報ネットワーク
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⑤ 自分で説明が難しい場合は、専門機関へつなぐ

情報提供や判断が難しい場合は、妊娠と薬情報センターを紹介しましょう。
患者自身が相談することができ、安心材料にもなります。


まとめ

ポイント内容
時期でリスクが変わる使用時期を正確に特定する
先天異常の頻度を基準にリスク説明自然発生率2〜3%と比較して薬のリスクを説明
有益性も含めて説明薬を使うことで得られる効果も合わせて伝える
情報は常にアップデート信頼できる情報源に基づく
難しい場合は専門家や専門機関へ相談妊娠と薬情報センターなどに繋ぐことも大切

問題

問題

妊娠中に使用された薬剤による胎児への影響について正しいのはどれか。1つ選べ。

A. 妊娠4週未満で薬剤を使用した場合、催奇形性のリスクが最も高い。
B. 胎児毒性は主に妊娠初期に生じる。
C. 催奇形性のリスク評価には胎児の形態異常の自然発生率を参考にする。
D. すべての薬剤は胎児に影響を与えるため中止すべきである。
E. 催奇形性のある薬剤はすべて添付文書に明記されている。


正解:C

【解説】

  • A:妊娠4週未満は「All or None」の時期であり、催奇形性は基本的に生じない。
  • B:胎児毒性は主に妊娠後期に見られる(例:NSAIDsによる動脈管早期閉鎖)。
  • C:正しい。先天異常の自然発生率2〜3%と比較して説明する。
  • D:母体への影響を考慮せず一律に中止するのは不適切。
  • E:すべてが記載されているわけではなく、専門書やデータベースが必要。

最後に

「妊婦だから薬は飲まない方がいい」は、もう過去の話です。
正しい知識と最新の情報をもとに、患者とその赤ちゃんにとって最適な判断ができる医療者でありたいですね。

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