はじめに:年末年始とお酒の関係
年末年始、そして忘年会や新年会。何かとお酒を飲む機会が増える季節です。職場の飲み会、学生時代の友人との再会、家族との団らん——気がつけば連日飲んでいるなんて方も多いのではないでしょうか。
筆者自身もお酒は嫌いではありません。むしろ、気の置けない仲間とグラスを交わす時間は人生の潤いのひとつだと思っています。ただ最近は、「飲みすぎた翌日に感じる疲労感」や「体重の増加」、「健康診断の数値」などが少しずつ気になってきました。年齢を重ねるにつれ、”お酒とのつきあい方”を見直すタイミングに差しかかっている気がします。
そんな折、目にしたのが「お酒と死亡リスク」に関する最新のメタ解析研究。これまで「少量なら健康にいい」とされてきたお酒の常識に、一石を投じる内容でした。今回はその研究の概要をわかりやすく紹介しつつ、これからの“賢い飲み方”について一緒に考えてみたいと思います。
飲みニケーションの変化:時代とともに
少し話は逸れますが、近年「飲みニケーション(=飲みながらのコミュニケーション)」のスタイルも大きく変わりました。
新型コロナウイルスの流行により、2020年以降、職場での飲み会が一斉に減少。オンライン飲み会という新しい文化も生まれましたが、やはり「リアルな場での一体感」が恋しくなることもありました。
2023年以降、ようやく日常が戻りつつある中で、「久々に飲みに行こう!」という機会も増えています。しかし以前とは違い、「飲み会を断っても角が立たない空気」や「ノンアルコールで参加する人」も増えた印象があります。
かくいう筆者も、“無理して飲まない”を選択肢として持てるようになってきた一人。昔ながらの「酒を飲んでこそ本音が聞ける」という文化にも一定の価値を感じつつ、時代に合わせた“ゆるやかな飲み方”の重要性を感じています。
「どれくらい飲むとリスクになるのか?」──最新の大規模研究から
さて本題です。2022年までに発表された107件の研究(延べ72万件以上のリスクデータ)を対象とした最新のメタ解析が発表されました(※本記事の参考論文より)。
この研究の目的は、「アルコール摂取量と全死亡リスク(All-Cause Mortality)」の関係を、多角的に評価すること。従来の「少量飲酒がむしろ健康にいい」という見方を改めて精査したものです。
▼ 研究の背景と工夫
過去の研究では、“禁酒者”というグループに**「元々は大量に飲んでいたが健康を害してやめた人(former drinkers)」**が含まれていたことが多く、これが「飲まない人の方が死亡リスクが高い」という誤った印象を生んでいました。
今回の解析では、こうしたバイアス(混入)を除外し、以下のようなカテゴリに分類しています。
- 終生飲まない人(lifetime abstainer)
- 元飲酒者(former drinker)
- 現在の飲酒者(active drinker)
そして、飲酒者は1日あたりの摂取量(g換算)に応じて次のように分類されました:
| 区分 | 摂取量(g/日) | お酒の目安 |
|---|---|---|
| 少量 | 1.3~24g | ビール中瓶1本程度 |
| 中量 | 25~44g | 日本酒2合、ビール大瓶1本強 |
| 多量 | 45~64g | 日本酒3合、ウイスキーダブル2杯以上 |
| 非常に多量 | 65g以上 | 毎日晩酌で2合超+α |
この表を見て、「自分の飲み方、どこに当てはまるだろう?」と振り返ってみてください。
▼ 研究結果のポイント(1):少量飲酒の“神話”は崩れた?
解析の結果、「少量の飲酒(1.3~24g/日)」は統計的に有意な死亡リスクの低下を示さなかった、ということが明らかになりました。
むしろ、研究手法(特にバイアス除去)をしっかり行ったモデルでは、「少量飲酒の保護効果(=飲んだ方が健康にいい)」という従来の見方は打ち消され、リスクがほぼ同等か、わずかに増加するという結果に。
つまり、「1日ビール1本なら健康にいい」というのは、データの解釈次第で変わる神話だった可能性があります。
▼ 研究結果のポイント(2):25g/日以上でリスクが上昇
では、どこから“危ない”のか?
最もリスクが明確に上がったのは、1日45g以上飲む人たちでした。
- 45〜64g/日 → 死亡リスクが1.2倍以上
- 65g以上/日 → 死亡リスクが1.4〜1.6倍に上昇
つまり、「日本酒3合以上」「毎晩ウイスキー2杯+ビール1本」などは明確に危険ゾーンです。
▼ 研究結果のポイント(3):女性は特に要注意
興味深いのは、性別による違いです。
- 男性の場合、リスクが上がり始めるのは45g/日超から。
- 女性の場合、25g/日超(日本酒約2合)ですでに死亡リスクが有意に増加していました。
また、女性では中等量の飲酒(25〜44g/日)でも、男性以上にリスクが高くなっていた点も重要です。
これは体格差、ホルモン、アルコール分解酵素の違いなどが関係している可能性があります。
まとめ:楽しく飲む、その前に少しだけ考える
この記事を読んで、「じゃあもうお酒やめよう」と感じた方はあまりいないかもしれません。筆者もそうです。お酒は楽しみであり、人生の味わいのひとつ。
大切なのは、「自分の飲み方を時々立ち止まって見直してみること」。
特に以下のような工夫で、“賢く飲む”ことは十分に可能です。
- 「とりあえずビール」→「ノンアルにしてみる」
- 「毎日飲む」→「休肝日を週2日作る」
- 「最後の1杯」→「やめておこう」で翌朝すっきり
また、職場や友人との飲み会でも、「お酒=必須」ではない空気を作っていくのも、現代的なヘルスリテラシーのあり方かもしれません。
年末年始は特に飲酒量が増える時期です。この機会に、ちょっとだけ“飲み方”を見直してみてはいかがでしょうか?
参考文献
- Zhao J, Stockwell T, Naimi T, et al. “Association Between Daily Alcohol Intake and Risk of All-Cause Mortality.” JAMA Netw Open. 2023;6(3):e232040. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.2040
おまけ:筆者おすすめ!一人忘年会にぴったりのおつまみ2選
おうちでゆったり一人忘年会を楽しむ方へ、本当は誰にも教えたくない、ちょっとしたおつまみのご提案です。
秋田オリオンポーキー
ポークジャーキーですが、ビーフジャーキーのような獣臭さがなく柔らか。ビールのお供に最高です。
かきたねキッチン チーズ in かきたね
甘めのお菓子感覚で、ウイスキーやハイボールにぴったり。お酒との相性が抜群です。
おまけとして、参考にしてみてくださいね!


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