CQ416:選択的帝王切開時に注意すること

産科ガイドラインを勉強する

はじめに

帝王切開は産科診療で最も頻度の高い手術の一つです。特に「選択的帝王切開(elective cesarean section)」は、緊急性を伴わず計画的に行うため安全と考えられがちですが、母体や胎児に対するリスクや術後管理の工夫が必要です。

本記事では**CQ416「選択的帝王切開時に注意することは?」**をもとに、初期研修医・後期研修医・医学生向けに臨床現場でのポイントを交えながらわかりやすく解説します。記事の最後には確認問題も付けました。


1. 選択的帝王切開とは?

選択的帝王切開は、正期産で児の成熟が見込まれ、陣痛発来前に計画的に行う帝王切開を指します。

適応例

  • 胎位異常(例:骨盤位)
  • 既往帝王切開(子宮破裂リスク回避)
  • 既往子宮手術(筋腫核出術など)
  • 児頭骨盤不均衡(CPD)

※胎児異常や妊娠高血圧症候群、前置胎盤・癒着胎盤などは含まれません。


2. 説明と同意(インフォームド・コンセント)

選択的帝王切開は計画的に行われるからこそ、文書による説明と同意が必須です。

説明すべき内容

  • 適応理由(なぜ経腟分娩が難しいか)
  • 手術リスク(出血・感染・血栓症、次回妊娠のリスク)
  • 代替案(経腟分娩の可能性)

3. 帝王切開の施行時期

帝王切開の時期は、母体・胎児双方のリスクに影響します。

国際的推奨

  • ACOG/NICE:妊娠39週以降(新生児呼吸障害のリスク低減)
  • WHO調査:妊娠37週では新生児罹患率・死亡率上昇

現場での注意点

  • 妊娠39週まで待つと陣痛発来や破水で緊急帝王切開が増加
  • 緊急手術は夜間・時間外のリスク上昇

実臨床の目安

  • 妊娠38週でも妥当
  • 妊娠37週はリスク説明のうえで選択肢となる

4. 感染予防:抗菌薬の投与

帝王切開後の感染(創部感染・子宮内膜炎)予防は必須です。

  • 投与タイミング:手術開始前60分以内
  • 推奨抗菌薬
    • 第一世代セフェム(例:セファゾリン)
    • ペニシリン系(アレルギー時はクリンダマイシン+アミノグリコシド)

日本のガイドライン

  • 未破水 → セファゾリン
  • 破水後GBS陰性 → セフメタゾール or フロモキセフ
  • 破水後GBS陽性 or 不明 → アンピシリン・スルバクタム
  • **術前腟内洗浄(ポビドンヨード、クロルヘキシジン)**も有効

5. 静脈血栓塞栓症(VTE)予防

帝王切開後はVTEリスクが上昇します。

  • 周術期の脱水回避
  • 早期離床
  • 弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法

必要に応じて抗凝固療法も検討(CQ004-2参照)。


6. 麻酔・循環呼吸管理

選択的帝王切開でも大量出血や合併症は起こり得ます。
理想的には、術中管理を専従で行う麻酔科医・スタッフ配置が望ましいです。


問題

選択的帝王切開について正しいものはどれか。2つ選べ。

A. 妊娠37週で行えば新生児呼吸障害のリスクは増えない。
B. 手術開始前60分以内に抗菌薬を投与することで感染予防ができる。
C. 帝王切開後は静脈血栓塞栓症のリスクは低下する。
D. 妊娠39週以降の帝王切開は新生児呼吸障害リスクを減らす。
E. 選択的帝王切開では麻酔・循環管理の専従スタッフは不要である。

正解

B, D

解説

  • A:誤り(37週では呼吸障害リスク上昇)
  • B:正しい(抗菌薬投与で感染率60〜70%減少)
  • C:誤り(VTEリスク上昇)
  • D:正しい(39週以降でRDSリスク低下)
  • E:誤り(専従スタッフが望ましい)

まとめ

選択的帝王切開は、計画的だからこそ「安全」と思われがちですが、母体・胎児に潜むリスクの理解と管理が不可欠です。

  • 適応理由・手術リスク・代替案を文書で説明・同意取得
  • 実施時期は妊娠38〜39週が基本(37週は慎重に)
  • 抗菌薬投与・VTE予防・麻酔管理を徹底
  • 小規模施設ではスタッフ配置にも注意

個人的には、初期研修医の頃にこのCQを意識して手術に立ち会うことで、帝王切開はただの手術ではなく、計画・管理・チーム医療の総合力が問われる場であると痛感しました。国家試験の知識としてだけでなく、実臨床でもこの視点を忘れずに取り組むことが大切です。

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