妊娠中のB群溶血性レンサ球菌(GBS)感染症は、新生児にとって重篤な早発型感染症の原因となります。日本でも年間数例の重症例が報告されており、母子感染予防の重要性が高まっています。
このブログでは、日本産科婦人科学会(JSOG)のCQ603をもとに、GBS保菌妊婦のスクリーニング・予防投与・治療のポイントをわかりやすく解説します。後期研修医・初期研修医・医学生の学習や臨床に役立つ内容です。
ガイドラインのポイント
- GBS保菌確認の方法
- 妊娠35〜37週に腟・肛門からの培養検査で確認(B推奨)
- 検体採取は腟入口部と肛門の両方から行う(C推奨)
- リスク群の抗菌薬投与
以下の場合は経腟分娩中や前期破水後にペニシリン系抗菌薬の点滴静注を行う(B推奨):- 妊婦がGBS陽性
- 前児がGBS感染症であった
- 妊娠中の尿培養でGBS検出
- GBS保菌状態不明で、破水18時間以上、または38°C以上の発熱あり
- Key words
- 早発型B群溶血性レンサ球菌感染症
- GBS
- 前期破水
GBS感染症の疫学とリスク
- アメリカのデータでは、全妊婦スクリーニング(universal screening)により早発型GBS感染症は1.7/1000出生 → 0.32/1000出生まで低下。
- 日本では2004〜2010年の調査で0.10〜0.12/1000出生と欧米より低いが、死亡率・後遺症率は13%前後と報告されています。
- 早産児はGBS保菌が陰性であってもリスクがあるため、注意が必要です。
GBSスクリーニングのタイミングと方法
- 分娩時の産道GBS保菌予測には分娩前5週間以内の検体採取が望ましい
- 日本では妊娠35〜37週に検査を実施(アメリカは36〜37週)
- 腟・肛門からの採取が基本で、肛門括約筋を越えた部位の検体が推奨される
- 早産期前期破水患者ではGBS保菌不明の場合、GBS陽性として扱う
予防投与(抗菌薬)のポイント
- GBS保菌妊婦には分娩の4時間以上前から抗菌薬投与
- 推奨薬:
- ペニシリンG(第一選択)
- アンピシリン(分娩まで4時間おきに投与)
- ペニシリン過敏症例:
- セファゾリン、クリンダマイシン、エリスロマイシンなど
- 抗菌活性や効果に注意(耐性あり)
- 予定帝王切開で破水/陣痛なしの場合は予防投与不要
臨床での注意点
- 妊婦の体重や薬剤感受性に応じて投与量調整が必要
- 日本ではアメリカ法に準拠した抗菌薬投与が保険適用外となる場合あり、インフォームドコンセント後に実施
- 新生児感染症の発症予防が主目的であり、遅発型GBS感染症には予防法は確立されていない
問題
問題
妊娠36週の妊婦に対してGBSスクリーニングを行ったところ陽性でした。前児にGBS感染症歴はなく、予定通り経腟分娩予定です。この妊婦への対応として正しいものはどれか。
- 妊娠37週まで再スクリーニングを行う
- 経腟分娩開始時からペニシリン系抗菌薬を投与する
- 予定帝王切開の場合も抗菌薬投与が必要
- 抗菌薬投与は出産後まで待つ
正解:2
解説
- 選択肢2:GBS陽性妊婦は経腟分娩中に抗菌薬投与を開始し、分娩まで継続する。
- 選択肢1:妊娠36週で陽性なら再スクリーニング不要
- 選択肢3:予定帝王切開で破水/陣痛なしの場合は予防投与不要
- 選択肢4:出産後の投与では新生児感染予防にならない
まとめ
- 妊娠35〜37週に腟・肛門からのGBS培養でスクリーニング
- GBS陽性、またはハイリスク妊婦には分娩中にペニシリン系抗菌薬投与
- 予定帝王切開やGBS保菌不明でもハイリスク条件に応じて対応
- 母子感染予防のため、スクリーニングと適切な投与が新生児早発型GBS感染症対策の基本
後期研修医・初期研修医・医学生は、この流れを理解しておくことで、臨床現場での意思決定や国家試験対策に役立ちます。


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